「クリーンエネルギー」は環境破壊を止められない 人類が嵌まった経済成長という逃れられない罠

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なぜなら、さらに成長しようとするとエネルギー需要が高まり、残された短い時間で、クリーンエネルギーでカバーするのは難しく、実際のところ不可能だからだ。

たとえそれが問題でなかったとしても、わたしたちは自問しなければならない。もし100%クリーンなエネルギーを手に入れたら、それを使って何をするだろう?

経済の仕組みを変えない限り、化石燃料を使って行っていたのと同じことをし続けるだろう。クリーンエネルギーを資源採取と生産に注ぎ、ますます急速かつ強いプレッシャーを生物界にかけていくだろう。

なぜなら資本主義がそうすることを要求するからだ。クリーンエネルギーは排出削減に役立つかもしれないが、森林破壊、乱獲、土壌劣化、大量絶滅を防ぐためには何の効果もない。

動力源をクリーンエネルギーに変えても、成長に取り憑かれた経済は依然としてわたしたちを生態系破壊へと邁進させるのだ。

経済成長という罠に囚われた人類

この件に関して厄介なのは、選択肢がほぼないように思えることだ。資本主義は基本的に成長に依存している。経済が成長しなければ、不況に陥り、債務が積み重なり、人々は仕事と家を失い、生活が破綻する。そうした危機を回避するために、政府は産業活動を継続的に成長させようと奔走する。

こうしてわたしたちは罠に囚われる。成長は構造上の必然であり、鉄則である。その上、鉄壁のイデオロギーに支えられている。右派と左派の政治家は、成長がもたらす配当の分配については言い争うかもしれないが、成長の追求に関して、両者に隔たりはない。

成長主義とでも呼ぶべきものは、近代史において最も強力なイデオロギーの一つになっており、誰も立ち止まってそれを疑おうとしないのだ。

政治家はこの成長主義を信奉しているので、生態系崩壊を食い止めるための有意義な行動を起こすことができない。

問題解決のためのアイデアは多くあるが、わたしたちが実行する気になれないのは、経済成長を損なう恐れがあるからだ。成長に依存する経済では、そのようなことは許されない。

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