実のところ、生態系崩壊に関する悲惨な記事を載せている新聞が、同じ紙面で4半期ごとのGDP成長を興奮気味に報道し、気候崩壊を嘆く政治家が、毎年の産業の成長を熱心に要求し続けている。この認知的不協和には驚かされる。
中には、テクノロジーが人類を救い、イノベーションが成長を「グリーン」にする、と考えることで、この緊張を和らげようとする人もいる。
「効率を向上させれば、GDPを生態系への影響から切り離すことができる。そうなれば、資本主義を変更することなく、世界経済を永久に成長させ続けることができる。仮にうまくいかなくても、大規模な地球工学計画に頼ればいい」という考え方だ。
これは気休めの幻想だ。正直言って、わたし自身かつてはそう信じていた。しかし、聞こえの良い言葉の層をはがしていくうちに、それが単なる幻想にすぎないことを悟った。
「グリーン成長」は存在しない
数年前からわたしは生態経済学の同僚と共に、グリーン成長について研究してきた。2019年には既存の証拠に関するレビューを発表し、2020年には、科学者たちが何百もの研究から得たデータをメタ分析した。
結論は次のように要約できる。「グリーン成長は存在しない。実験も経験もグリーン成長を支持しない」。
そう悟ったわたしは、自分の立場を変えざるを得なかった。生態系が緊急事態に陥っている時代に、幻想に基づく政策を構築している暇はない。
誤解しないでほしい。生態系の崩壊を防ぐにはテクノロジーが欠かせない。ありとあらゆる効率の向上が必要だ。しかし科学者たちは、テクノロジーは問題を解決しないことをはっきり理解している。
なぜなら成長志向の経済では、人間の影響を減らすのに役立つはずの効率向上が、成長目標を推進するために利用され、ますます多くの自然を原料採取と生産のサイクルに放り込むからだ。
テクノロジーではなく、成長が問題なのだ。
(翻訳:野中香方子)
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