石垣島が「陸上自衛隊」を受け入れた本当の理由 辺境から南西防衛と台湾有事を考える(上)
日本列島の最南端にある石垣島から見える景色は、東京とはかなり異なる。石垣島は台湾の中心都市、台北から約270キロメートル離れている。香港からは約1100km。フィリピンの首都マニラからは約1140 km。他方、石垣島から沖縄本島までは約410 km、東京までは約1950 kmの距離がある。石垣島からは、沖縄県の県庁所在地である那覇や日本の首都よりも台北の方が近いのだ。
陸上自衛隊が「金のなる木」に
石垣市は2015年に陸上自衛隊配備の受け入れを表明、2023年3月に駐屯地が開設した。中山義隆市長のキャラクターから、同市は国の安全保障政策への協力に非常に積極的な自治体だという印象を持たれがちだが、自治体の内実を観察すると、安全保障以外の自衛隊受け入れの動機が見えてくる。
端的にいうと、石垣島が国境沿いに位置する島であるがゆえに抱える環境問題に対する国の制度の不備や、そうした島への影響を考慮しない日台漁業取り決めの欠陥が、陸上自衛隊を石垣の人々にとって「金のなる木」にしたというものだ。
アジア諸国と間近に接する石垣島は、台湾や香港、中国などからの観光客が、新型コロナウイルス流行前の2018年には年間約126万人訪れるなど、「近くにある日本」として人気を集めた。ただし、アジア諸国から石垣島に来るのは人だけではない。中国語やハングルが表記されたペットボトルなどの漂流ゴミも、大量に石垣島の海岸に流れ着く。
2021年度の石垣市の漂着ゴミ処分量はペットボトルをのぞいて約52トン、そのうちの約8割がプラスチックゴミだった。漂着ペットボトルは毎年2.5~3トン回収されている。塩分が多く付着しているため再加工が難しく、石垣市が業者に依頼して埋め立て処分を行うのに年間500万円以上の費用がかかる。
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