したがって、保険技術の面でタカフルにはなんら真新しいものは見られません。ただここで注目したいのはタカフルの持つ理念と、いわば精神性の高さです。明治の頃、日本を訪れた外国人たちは生活水準や工業技術力で遅れていても、日本人の精神性や民度の高さに驚かされたと言います。タカフルは、我々が知らぬ間に見失ってしまった保険本来の理念に立ち帰らせてくれます。
「相互扶助」がタカフルの基本理念
「相互扶助」がタカフルの基本理念ですから、保険は保険会社から買うのではなく、相互扶助制度に自ら参加するという考え方に立ちます。仲間と助け合い制度を作り、そこにお金を寄付し、困った状態になった仲間が出れば援助します。だからプールされたお金は保険会社でなく自分たちが所有し管理します。これがタカフルの“斬新性”です。保険をカジノの胴元である保険会社から自分たちの手に取り戻しているのです。
米国で発達している自家保険制度も、保険会社が提供する保険商品に飽き足りない消費者が相互扶助の理念に立ち返り、自分たちで保険を作ってしまうことから始まっています。
日本では各種共済や相互保険会社の理念がこれに通じています。共済制度は、相互扶助の理念に立ち返れば、保険は保険会社のものではなく自分たちのものである、との考え方から始まった助け合いの仕組みです。
カジノの胴元に相当する保険会社から保険を奪い返さないかぎり、本当の意味での「相互扶助」は成り立ちません。そして、保険のギャンブル性は払しょくできません。
欧米や日本の保険会社は、イスラム社会に新たな保険市場を見出す有効な手段として、タカフルを利用しようとしています。イスラム金融と並び、イスラム保険も新しい市場として脚光を浴びつつあります。しかし、それ以上に着目すべきは、私たちがすっかり忘れてしまった保険の原点、保険の理念を思い起こさせてくれていることなのです。
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