「奨学金280万円」31歳彼女の苦い20歳の誕生日 父の新しい妻から「授業料は払えない」と電話…

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原田さんは育児休業に入る前に、忙しい部署での勤務に精を出していたおかげで、数百万円は貯金があった。そのため、育児休業中も奨学金の返済に無理なく取り組むことができている。

さらに夫の年収と合わせると、2人の合計収入は1400万円を超える「パワーカップル」となったので、生活の心配も当分はしなくてもよさそうだ。

故郷の漁村から抜け出すことができなければ、原田さんは今の仕事に就けたかどうかはわからず、金銭的な余裕を持つことはできなかっただろう。

そのため、彼女は奨学金を借りたことを肯定的に受け止めている。

地元を抜け出せたことが大きな自信に

「わたしの地元は田舎で所得も高くない地域のため、多くの家庭が奨学金を借りていましたが、多かれ少なかれ、地方はどこも同じようなものでしょう。だから、奨学金制度が存在しなかったら、あるいは日本学生支援機構(JASSO)のように貸してくれる団体がなかったら、陽の目を浴びることができなかった人も多いでしょう。

都会と地方にはそのような経済的な格差があります。地域差で生まれてしまった格差をフラットにするためにも奨学金は必要不可欠だと思います。都会の人は奨学金制度があるせいで、『みんなと同じように大学に行かないといけない』と苦しむ人もいるかもしれませんが、わたしのように地元から抜け出した人間にとっては大事な資金援助です」

ちなみに、原田さんの2番目の妹は奨学金をもらいながら看護学校に進学して、今は看護師。3番目の妹も奨学金を借りて、大学に進学。卒業後は地元の銀行に就職しているように、奨学金は原田家にとって生命線となっているのだ。

奨学金制度と地域格差の関係を訴える原田さんだが、一方で奨学金を借りて地元を抜け出せたことは大きな自信にもつながった。

「わたしの勤めている会社の同期たちの中には、関西の名門高校出身の人がたくさんいます。そういう人たちの境遇を聞いて『羨ましいな』という気持ちもありつつ、『そんな優秀な人たちと同じところで働けているわたしだってすごい!』と考えるようにしています。どれだけ、劣悪な環境で育とうが、裕福な家庭に生まれようが、同じ会社に入社してしまえば、同じ土俵で戦えるんです」

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