「言いたいことが伝わらない人」と伝わる人の差 「事実」と「意見」、両方を意識して話せているか

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最後に、人はなぜ異なる意見を持つのかということを考えておきましょう。事実と意見という視点から整理すると、意見は「事実」が起点になることがわかります。そうなると、考えられるケースは、次の3つになります。

人が異なる意見を持つ3つの訳

・「事実」が揃っていない

そもそも、保有している事実が違うという可能性があります。一方で、それぞれが持っている情報が違うことは逆に当たり前です。意見交換を始める前に、お互いの持っている情報は同じであるのかをきちんと押さえるようにしましょう。

・「事実」が揃っていても、着目している場所が違う

仮に、持っている情報自体が同じだとしても、どこに着目して情報を捉えるかはやはり人によって異なります。自分に有利な情報に敏感になり、逆に不利な情報は避ける傾向があります。情報量が揃っているだけでなく、お互いが等しく情報を見られているかという点にも留意しましょう。

・「事実」に対して、同じ見方ができたとしても「意見」の土台となる前提が異なる

最後に、持っている情報も見ている情報も同じだとしても、同じ意見を持つかはわかりません。なぜなら、意見を導き出す前提が人によって異なるからです。一般的に、組織は機能に特化して作られます。そうすると組織が違えば、優先される判断軸は異なってくることが普通です。また、個人として、何を判断軸として優先するかは当然異なってきます。

したがって、むしろ意見は違うことが自然と考えて、その違いはどこに起因しているのかを理解するようにしましょう。

あなたの立場なら、私も同じ意見を持つかもしれないという状況になって、初めてお互いが理解し合えたり、議論の前提が揃ったと言えます。違う風景のまま議論をするのは、不毛なもの。同じ土俵に乗ったうえで意見交換ができるようにしていきましょう。

岡 重文 グロービス経営大学院教授

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おか しげふみ / Shigefumi Oka

京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了。工学修士。大手情報システム会社、コンサルティング・ファームを経てグロービスに入社。企業研修担当、eラーニング事業の立ち上げに関与したのち、経営管理本部で、情報システム部門ならびに人事・総務を統括。現在はファカルティ本部で「クリティカル・シンキング」「ビジネス定量分析」「テクノベート・シンキング」等のコンテンツ開発や、講師の育成業務にかかわる。

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