エアコンが効いた部屋ならば、ある程度の長時間使用にも耐えられるだろう。これは3D表示にも言えることで、丸いものがきちんと丸く感じられる3D感を持ちながらも、不自然な視差で”脳が疲れる”といった感覚がない。遅延がないことも含め、いわゆるVR酔いのような症状は感じなかった。
では、実際のところVision Proはどのように使う製品なのか。あくまでもこの製品は、”パーソナルコンピューター”だ。
Vision Proのアプリは、iOSやiPadOS用から簡単に移植することが可能だ。それは基調講演で、マイクロソフトのOfficeがVision Proで利用できていたことからも想像できるだろう。Vision Proには、最新のMacと同じチップが搭載されている。
空間の中に自由にアプリの画面を配置し、それぞれを操作しながらアイデアをまとめたり、3Dに対応したアプリならば、歩き回りながらその3Dモデルを眺めて回ることができる。オンライン会議のツールとしても、Vision Pro自身でユーザーをキャプチャして作成する3Dペルソナ(ユーザーそっくりの顔で、表情豊かに相手に見せることができる)を通じ、スムーズなコミュニケーションを行えるはずだ。
オンライン会議で資料を画面上に広げ、さらにはビデオタイルを並べ、自分のメモを並べて……と、ディスプレイの狭さに四苦八苦することもない。
3D映画や3Dモデルデータを用いたアプリケーションは、これまでにない快適な立体感と高精細なディテールで、新たなコンテンツが生まれてくることを予感させる。リモートスクリーンのパネルを配置すれば、そこにMacやiPad、iPhoneの画面を映し出すこともできるだろう。
新たなジャンルを切り拓く製品に
”Vision Proで何をするのか?”という問いへの回答は、実に難しい。これまでにパーソナルなコンピューターがこなしてきたことは、すべてVision Proで、より豊かなユーザーインターフェース空間の中で行える。
テキストだけがコンピューティングの窓だった時代から、グラフィカルなウィンドウを用いたデスクトップ画面の時代になり、さらにタッチパネルを用いたスマートフォン、スマートタブレットの時代も訪れた。ユーザーとコンピューターがどのようにインタラクションするのか、その枠組みが変わるとき、イノベーションは一気に進み始める。
Vision Proは”メタバースへの覗き窓”ではない(正確にいうならば、そうした使い方”も”、可能ではあるが)。パーソナルコンピューティングに、新たなジャンル、インタラクションの手法を切り拓く野心的な製品だ。
これから10年後、テクノロジー製品のトレンドを変えるきっかけとなった製品として、記憶されるものになっているだろう。
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