この決定に対して九州電力は、「今回の決定は川内原子力発電所の安全性は確保されているとの当社のこれまでの主張が裁判所に認められたものであり、妥当な決定をいただいたものと考えております」とのコメントを発表した。
また、原子力規制委員会の田中俊一委員長は22日の定例会見で、「(新規制基準や原発の審査を)評価していただいたことは非常に歓迎すべきことだ」と発言。福井地裁と対照的な決定になったことについては、「裁判官は基本的に独立だから、そういうこともある。なぜそういう違いになったのかは分からない」と語った。
住民側は地裁決定が「事実誤認」と反発
一方、住民原告団と弁護団は、「人権の砦として国民の人格権を守るという裁判所の責務を放棄するものであり、三権の一でありながら、行政による人権侵害を抑止できない裁判官の臆病な態度を強く非難する」との声明を発表した。
住民側が特に厳しく非難しているのが火山審査について。九電は、カルデラ火山の地下浅部には大規模なマグマ溜まりがないことなどから、南九州地方で「破局噴火が起こる可能性は十分に小さい」としている。だが住民側は、これは「火山学会が総出で批判したほど科学的に根拠のないもの」と主張。「マグマ溜まりの状況を的確に調査する手法は確立されておらず、決定は事実誤認である」と指摘している。
また、避難計画についても、要支援者の避難計画は立てられておらず、鹿児島県知事自身が10㌔㍍以遠の地域では実効性のある避難計画を定めることは不可能と認めているにもかかわらず地裁が問題なしとしたことに対し、住民側は「住民の生命身体の安全という、人格権の根幹部分を軽視した極めて不当な判断」と非難している。
過去の原発稼働差し止め裁判においては、昨年5月の大飯原発に関する福井地裁判決で差し止めが認められ(関電が控訴)、同11月の大飯・高浜原発に関する大津地裁仮処分では却下されたものの、実質的には新規制基準の不適切さを指摘するものだった。そして、今月14日の高浜原発に関する福井地裁決定で、ただちに効力を持つ差し止め仮処分命令が初めて出された。
これらと比べ、今回の鹿児島地裁判決は電力会社側の完全勝訴とも言えるもので、それだけに住民側の落胆や憤慨も大きいと見られる。ただ、住民側は今回の地裁決定に対して高裁へ即時抗告を行う姿勢。原発再稼働を巡る住民と電力会社の闘いは全国的に長期化が必至だ。
(撮影:尾形文繁)
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