会社負担で資格を取得、直後に転職、返済義務は? 意外と知らない就業規則の問題を社労士が解説

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雇用契約で副業をする際の時間外とは、どちらが本業でどちらが副業なのかではなく、また報酬の多寡にもよらず「契約の前後関係」で考えます。雇用契約の順番は労働者本人の申告がなければ会社側ではわかりません。面接や応募の段階で、既に働いている会社があることはきちんと伝えましょう。

*1 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」870

会社が立て替えた「社会保険料」問題

相談:介護休職中、会社が社会保険料を立て替えましたが、復職後の給与から無断で天引きされました。

アドバイス:同意のない給与からの天引き控除は、労働基準法違反です。大前提として、給与からの天引き控除は労働基準法で禁止されています。例外として認められるのは、次の3つの場合に限られます。

①所得税、社会保険料、雇用保険料、住民税など、天引きについて法律に根拠のあるもの。

②労働組合や従業員の代表と会社が文書を取り交わしていて、控除すると決めているもの。例えば、社員会の互助会費、社宅費、レクリエーション費など。また、それを就業規則に記載しておく必要がある。

③本人が天引きに同意しているもの。例えば、会社からの貸付金の返済など。

①については、社会保険料の控除は前月およびその月のみ許される*2ため、相談の「同意していないのに勝手に天引きされた」という状況は、会社が労働基準法違反をしていることになります。

会社としては立て替えた社会保険料を早く返してほしくて天引き控除しているのでしょうが、無断で天引きされては本人の生活が成り立たなくなってしまいます*3。

このような場合、会社に立替金を返す意思があることを伝え、天引きされた額を一旦返してもらえないか相談しましょう。その際には、「いつまでに、いくらを返す」と、具体的な返済スケジュールと金額を提案できると理想的です。

会社に直接相談しにくいときは、労働組合や労働基準監督署などの外部窓口に相談するのもお勧めです。会社が話し合いに応じる気配がなかったり、一旦返金すると言ったのにずるずると遅れているときは、こうした相談窓口を活用しましょう。

*2 厚生年金保険法第84条、健康保険法第167条、労働保険徴収法第32条など。
*3 労働基準法第24条には賃金全額払いの定めがありますが、その例外として次のように定められています。「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」

就業規則と並んで「福利厚生制度」も、会社ごとの個性がよく表れると思います。

最近ではカフェテリアプランというものも出てきました。これは、会社から付与された一定のポイントの範囲内で、自分の好きなメニューを選ぶことができる福利厚生制度です。

また、福利厚生制度を利用して、社会保険労務士に年金について相談する人もいます。こうしたバリエーションに富んだ内容を提供できると、労働者1人ひとりのニーズに細かく応えることができます。つまり、一律の福利厚生よりも満足感を得る労働者が増えるといえます。

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