福利厚生そのものを重要視して就職や転職をする人は少ないかもしれません。ただ、一律の福利厚生というのは、ライフステージの状況や変化によってはまったく利用しないこともあります。労働者自身が必要に応じた内容を選ぶことができるのは非常にフェアな制度設計であると感じます。
ちなみに、カフェテリアプランを採用している企業担当者に聞いたところ、その企業で最も利用が多いのは、家賃補助や昼食費の補助など金銭面でのサービスだそうです。
もともとその企業では、保養施設と契約して、社員が年に1回は無料でそこを利用できる制度がありました。しかし、最近では利用する社員がほとんどいなくなったため、カフェテリアプランに変更したそうです。
「会社負担の資格取得」問題
相談:会社負担で資格取得後、予定が変わり転職することに。費用を返せと言われたら?
会社が、社員の自己啓発や資格取得の費用を補助・負担をすることは広く行われています。厚生労働省の調査では、従業員の資格検定支援として費用を援助する企業は8割を超えました*4。
仕事で必要な資格もあれば人材育成など、支援の目的はさまざまです。昨今の採用市場では「いかにその会社で成長できるか」を重視する学生が増加傾向にあり、優位性獲得のためにも支援に力を入れる会社はますます増えていくでしょう。
結論からいえば、次の条件を満たしていれば、資格取得後に転職・離職しても労働者に費用返還の義務はありません。
① 仕事を行う上で必要なために、業務命令で取得した場合
② 資格取得に要する費用を会社が「負担」していた場合
まず、仕事で必要な資格の取得費は会社負担になります。資格を取った後、「〇年以内に離職した場合は、費用の全額または一部を返還する」という規定がある話もよく聞きますが、これは労働基準法第16条違反*5に問われる可能性があります。
問題になるのは、労働者の自由意思で資格を取得した場合や、資格取得費用を会社が労働者に「貸し付けている形」の場合です。
ある大手企業社員が、社外研修制度による海外留学から帰国後に退職した例*6では、会社の費用返還請求が認められました。会社の費用貸与制度が、制度利用後の一定年数を経過すれば支払いを免除するとしていたからでした。
一方、同じ海外留学であっても科目選択に会社の意向が反映されたり、専攻分野が仕事と関連性が高いときは労働者に返還の義務を要しないとした判例*7もあります。
このように費用貸付の形でも、仕事との関連性が強ければ返還しなくていい可能性が高くなります。制度利用時は仕事との関連度合いや費用の支出方法を確認しておきましょう。
*5 労働基準法第16条(賠償予定の禁止)
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」
*6 大成建設事件(東京地裁令和4年4月20日判決)
*7 新日本証券事件(東京地裁平成10年9月25日判決)
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