「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない

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そこで、胃腸に負担をかけない食事として私が実践したのは、「果物と生野菜中心の食生活」です。

ご存じの人も多いかもしれませんが、生の食べ物には酵素が含まれています。そのため、生の食べ物を食べると酵素を補うことになり、胃腸は援軍を得て重労働から解放されます。ですから、体があまり疲れなくなります。

疲れなくなると身軽な感じになって、動くのが億劫でなくなります。イライラすることも少なくなり、食後もスムーズに仕事に移れます。イライラが少なくなれば、人との衝突も減るでしょうし、人間関係にもよい影響が出てきます。

それが、心の不調の原因となるストレスを減らすことにつながるのです。

食事の見直しは心が回復するきっかけ

私は、とにかく野菜を生で食べました。というより、野菜は「生でかじる」感覚です。普通は加熱して調理するごぼうでも、生でガリガリ食べました。

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リンゴ、バナナ、オレンジ、キウイなど、果物もお腹がすいたら食べるようにしていました。宮島式食事法では、生野菜と果物ならいくら食べてもOKなのです。

食生活を改めると、日ごとに体が軽くなってくるのを感じるはずです。私の場合は、2週間ほどで明らかな体調の変化がありました。

まず、やせてきました。当時20代だったというのに、無駄なぜい肉が全身を覆って、動くのが億劫でした。それがスッキリし始めて、なんと2カ月で20㎏も減量。ダイエットが目的だったわけではありませんが、自分でも驚きました。

そのほかにも、便通がよくなったり、朝スッキリ起きられるようになったり、肌がツヤツヤしてきたり。体の変化にともない、心までらくになってきて、心配や不安を感じることが減り、全身にエネルギーが満ちてくるのを実感しました。そして、最終的にはうつから抜け出すことができました。

実は、「変わったかも」という感覚が、メンタルが上向くためにはとても重要なのです。私自身の経験からも言えますが、変わったという気づきが得られることで心の不調は一気に快方に向かうケースが多いからです。

私は、うつに苦しんだ7年間、ずっと抗うつ薬を飲み続けましたが、自分のうつも患者さんのうつも治せませんでした。それが、食事を変えることでうつを克服できたのです。

食事の内容を変えると、体が変化していきます。同時に、それまでの食事が変わることで、食べ物に対する見方、食事に対する考え方も変わっていきます。

こうした「見方の変更」「考え方の変更」が、メンタルを上向かせる手助けをしてくれます。それまで自分を苦しめていた考え方から解放されると、心がらくになっていきます。たかが食事ですが、大きな自信になります。

生き方や働き方はすぐには変えられなくても、食事なら今日から変えられます。まずは、できる範囲で2週間から。いや、1週間でもかまいません。ほんの少し食事を変えるだけで、体が変わります。そして、少しずつ心も変わっていくことを実感できるはずですよ。

宮島 賢也 精神科医・産業医

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みやじま けんや / Kenya Miyajima

1973年、神奈川県生まれ。防衛医科大学校卒業。研修中、意欲がわかず精神科を受診、うつ病の診断を受ける。自身が7年間抗うつ剤を服用した経験から、「薬でうつは治らない」と気づき、食生活と考え方、生き方を変え、うつ病を克服する。その経験を踏まえ、患者が自ら悩みに気づき、それを解決する手伝いをする方向へと転換。うつの予防と改善へ導き、人間関係を楽にする「メンタルセラピー」を考案する。心の深い世界を知ったことから、さらに探求を開始し、現在は産業医などをしながら、心の不調の予防や教育により一層関われる方法を模索中。

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