すべるのを恐れないAIが考えた「渾身のギャグ」 生成AIが考えた日本語でも英語でもウケるネタ

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膨大なデータを学習するAIとて同じことで、契約書やプログラミングコードのようにパターンがおおよそ決まっているものの生成には驚くべき精度を発揮しますが、「面白いこと」のような受け手によって結果が違うものは苦手としているのです。

どうやら現時点では、英語のことば遊びを組み替えることでジョークを生成しているようですが、「これは相手にとって面白いぞ」とAIが感じているわけではないので、日本語話者に英単語にオチがあるジョークを言ってもまったく意味が通じない、というところまで配慮できません。

つまり、有料会員しか鑑賞できないNetflixドラマの話をやたらとしたがる人と同じで、相手が理解できるかどうかはどうでもよく、単に自分が話したいだけの身勝手な人と会話しているようなものです。残念ながらこれが2023年5月時点のAIの限界です。

学習するデータが圧倒的に足りない

ただし、この結果をもってAIはジョークが言えないと断定してしまってはいけません。生成AIの能力は、学習した対象がなんであるかによって決まります。今回のように「英語でかつ日本語でも面白いと感じること」というものはあきらかに学習する機会が少ないでしょう。

もっと膨大なデータを学習し、要求する側の言語背景や地域社会ごとの文化の違いなどまで理解すれば、もっとましなジョークを言えるようになると期待できます。

また、生成AIは完全に0から1を生み出せるわけではありません。例えば天才画家のピカソの青年期の精緻な画風をAIに学習させた結果、それを模倣することはできると思いますが、晩年のキュビズムといわれる独創的な画風をAIが突然生成してくるかというと、それは期待できません。

同じように笑いというものも「ボケ」という着想の飛躍、意図的な非常識さがあってはじめて成立するものなので、過去のデータからそれらしきものを引っ張って生成された現時点のAIのジョークには、立川談志や赤塚不二夫のような天才的なキレがないわけです。

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