NTTとJERA、再エネ3000億円買収ではじく皮算用 洋上風力入札「第2ラウンド」を巡る思惑も錯綜

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今回、JERAが食指をのばしたGPIとは一体どんな企業なのか。創業者の堀俊夫名誉会長は大手商社の旧トーメン(現豊田通商)で風力発電事業を手掛け、1980年代にはアメリカのモハベ砂漠でのプロジェクトに携わった。その堀氏がトーメン時代の仲間と立ち上げたのがGPIだ。

2004年創業のGPIは、再エネ開発を草創期から担ってきた企業で、業界関係者からは開発能力を評価する声もある。2020年には総事業費約500億円をかけた、国内最大級の風力発電所が青森県で運転開始している。

2020年4月、青森県で商業運転を開始した「ウインドファームつがる」。風車38基を設置し、総出力は12万1600キロワットと国内最大規模だ(写真:JERA)

一方、同社の業績(2021年度)を見ると、売上高75億円、営業利益23億円とまだ事業規模は大きくない。5月18日に行われた会見では、「高値づかみではないのか」との質問も飛んだ。これに対し、NTTアノードエナジーの伊藤浩司副社長は「適正な価格で案件取得ができた」と応じている。

入札第2ラウンドを巡る思惑も

3000億円規模の巨額買収となった背景には、「洋上風力の入札を巡る思惑が働いた」との見方も業界関係者の間では広がっている。GPIは2007年から北海道の石狩湾新港の洋上風力プロジェクトに取り組んできた。このプロジェクトは2023年末に運転開始する予定だ。国内初となる大型洋上風力である秋田県の秋田・能代港のプロジェクトが全面運転開始したのが2023年1月で、GPIの案件は国内2番目の大型案件ということになる。

運転開始時期は1年遅れるものの、GPIのプロジェクトは業界内で大きな注目を集めている。秋田・能代港で使う発電機が4.2メガワット機なのに対し、石狩湾新港は「国内でいち早く8メガワット機を運用することになる」(大和証券の西川周作氏)からだ。

四方を海に囲まれた日本にとって、洋上風力発電は「再エネ主力電源化の切り札」というべき存在だ。導入が進んだ欧州では、風車の大型化とともにプロジェクトの大型化が進み、コスト低減が進展してきた。

気象や海象条件が異なる日本で、これをどう実現するか各社は頭を悩ませている。順調に石狩湾新港の大型プロジェクトをスタートさせようとしているGPIのノウハウは、洋上風力に参画しようとする企業にとっては貴重なものだ。

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