「日本車の危機」感じざるをえないタイ脅威の数字 4年で激変した受注台数ランキングの顔ぶれ

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タイの平均所得は日本に比べるとまだ低く、一方で新車価格は物品税が含まれることもあって日本よりも高いので、一般庶民にとって新車は無理をしての大きな買い物だ。だから、価格の安さは大きな魅力となる。

また、中国勢はBEVでブランドイメージを牽引していることも、プラスに効いているようだ。ただし、タイで一般的な人々がBEVを選ぶ理由は、地球環境や先進性ではなく、エネルギーコストが安いこと。

物価を考えると、タイはガソリン代(日本よりも若干安い程度)も電気代(日本の2/3程度)も安くないのだが、ガソリン車よりもBEVのほうが走行コストは安い計算となる。購入時の税金だって安い。だから、BEVが注目されているのだ。

日本でも展開を始めたBYDは、手頃な価格のドルフィンを中心にアピール(筆者撮影)

では、なぜこれまで中国車や韓国車が広まらなかったのか。その理由は、リセールバリュー(売却時価値)の低さにある。ある時期、韓国車や中国車(ガソリン車)が台数を伸ばしたこともあったが、日本車に比べるとリセールバリューが低く「トータルで考えると日本車のほうがお得だ」と、数年で人気が廃れてしまった。

現在の中国車人気は、しばらく様子を見なければ何ともいえないが、中国車の中心となるBEVのリセールバリューが低いのは、世界的な傾向なので不安要素ではある。

タイは東南アジアの前哨戦となる

しかし、明らかな追い風もある。それは、タイの人々の気持ちの変化だ。

ある世代以上の人は「日本製品は壊れないし信用できる。憧れもある。でも、中国製品は信用できない」という考えが根強くある。しかし、若い世代では「スマホも家電も中国ブランドだし、クルマも中国製でいい。むしろクール」と考える人も増えているのだ。

そういった中国製品に対する気持ちの変化が、中国車のシェア拡大にプラスとなる可能性は大いにあるだろう。

猫のアーチの下で展示するのはGWMのBEV、その名もORA Good CAT(筆者撮影)

タイに限らず東南アジアの多くの国では、これまで日本車がこの世の春を謳歌してきた。しかし今、そのいくつかの国では中国勢が莫大なPR予算を投入し、猛攻撃を仕掛けている。間違いないのは、中国勢の拡大によって、東南アジアの広い地域で日本車がシェアを大きく落とす可能性が少なくないことだ。

広い東南アジアの中で、タイはその前哨戦にあたるマーケットといっていいだろう。

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この先、数年の状況を見て、タイで日本車がこれまでと変わらない勢いを保つことができればひと安心だし、シェアが大きく落ちるようであれば、東南アジア全体で日本車の元気がなくなる可能性が強まる。

今、日本メーカーには、東南アジア諸国でこれまで経験したことのないピンチが目前まで迫っているのだ。

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工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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