「日本車の危機」感じざるをえないタイ脅威の数字 4年で激変した受注台数ランキングの顔ぶれ

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今やバンコク国際モーターショーは、世界一来場者数の多いモーターショーなのである。そして、その来場者数の多さのからくりが「お得にクルマを買える場所」であり「家族でクルマを選びにくる場所」であることなのだ。

MGのブース。人の多さからモーターショーへの注目度の高さがうかがえる(筆者撮影)

2023年の会期中に受注した4輪車の台数は、4万2885台。2022年のタイにおける4輪車販売の総数が84万9338台(タイ工業連盟発表データによる乗用車とピックアップトラック&SUVの合計値)だったから、タイで販売される車両のうち5%程がモーターショー会場内でオーダーを受けたことになる。

5%というと少なく感じるかもしれないが、街を走るクルマの20台に1台がモーターショー会場内で販売されたクルマと考えると、なかなかな数。言い方を変えれば、バンコク国際モーターショーでの受注台数は、タイの新車市場における人気のバロメーターといっていい。

中国車を見かける機会が増えた!

ここでタイの乗用車市場について、簡単に説明しておこう。多くの東南アジアと同じく、タイの自動車産業は現地進出60年を超えるトヨタをはじめ、日産やホンダそして三菱自動車など、日本の自動車メーカーが大きく伸ばしてきた。

街を走るクルマの9割以上が日本メーカー車で、その比率は東京23区よりも高い。富裕層はメルセデス・ベンツをはじめとする欧州のハイブランドを好む人も多いが、一般的に「自動車といえば日本車」といっても過言ではない。

アルメーラなど日本で販売されない車種も見られる日産のブース(筆者撮影)

もちろん、この圧倒的に日本車が強い地域に、韓国メーカーや中国メーカーが勝負をかけてくることはあった。ところが、日本車の牙城はなかなか崩れることがなかったのだ。

しかし、冒頭でモーターショー会期中の受注台数ランキングが変わってきたことを紹介したように、状況は激変している。コロナ禍が明けて3年ぶりにバンコクを訪れた筆者が驚いたのは、中国車を街中で見かける頻度が明らかに高かったことである。

そうしたタイの変化は、モーターショー会場でも実感した。まず、中国ブランドのブース面積が、4年前には想像もできなかったほど広くなっていた。会場内でもっとも広いブースは変わらずトヨタだが、2023年はBYDやMGがトヨタ(レクサス部分を除く)に迫る規模の広いブースを展開していた。

トヨタを除くと、MGやBYDのブースの大きさが目立つ(筆者撮影)

そのうえ、それら中国ブランドのブースの混雑度は、コロナ前には考えられないほど高かったのだから驚くしかない。コロナ禍を経て、タイでは中国車の立ち位置が大きく変わったのである。

タイの人々はなぜ、中国車を受け入れるようになったのだろうか。まずは、日本車と比べて価格が安いのは、間違いない。

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