もやし買うフリして肉「セルフレジ万引き」の実態 監視カメラ設置より「声かけ」に効果があるワケ
ただ、セルフレジの導入目的に立ち返ると疑問もある。そもそもセルフレジは人手不足対策や人件費削減など、生産性を高めるために導入されるものだ。
万引き防止のために新たに人手や教育にかける時間が必要となれば、本来の目的だった生産性向上につながらない。企業は二の足を踏まないだろうか。
「セルフレジで万引き被害ゼロを目指すことは無理だと考えています」。伊東さんは断言する。伊東さんの経験では、しっかり教育したスタッフを2人配置して、8割ぐらい万引きを減らせる感覚だ。
防犯カメラなど機械による監視の目を増やすのはどうか。「勘違いされがちですが、カメラは事後確認のためのもので、万引きの抑止には効果がないと思っています」(伊東さん)
防犯カメラ以外にも世間にはメーカーが開発した不審者検知システムなどの製品がある。大久保准教授らは海外製のカメラを使った不審者検知システムを複数の心理学者らと検証したが、心理状態との関連性が得られず効果はなかったそうだ。「今の技術では機械化や自動化で万引きを防ぐことは難しい」というのが2人の見方だ。
疑うより、ホスピタリティー向上の意識が重要
セルフレジの不正利用による万引きは、比較的新しい手口で対策も手探りだ。「間違えてしまった」「忘れていた」など、言い訳がしやすいという万引きの特性もある。さらに、クレプトマニア(窃盗症)に代表されるように、精神疾患を主張するケースもある。
このような困難さの中で、万引きを減らすことだけが第一目的の店員教育は、スタッフが敬遠する可能性がある。
大久保准教授は「お客さんを疑うより、ホスピタリティーを向上させる意識を持つ。そのことが結果として目配りにつながり万引き防止につながります」と話す。大久保准教授らはセルフレジコーナーの店員配置の変更や声掛けによって、どのぐらい不正利用を減らせたのか、効果検証する計画だ。
(ライター・国分瑠衣子)
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