【産業天気図・建設】大震災発生で「アジアシフト」、「予算執行遅れ」、「調達難」の三重苦
11年4月~9月 | 10月~12年3月 |
建設業界の景況感は、2011年4月から1年間通じて前期を下回る見通しだ。東日本大震災の影響で公共工事には予算執行の遅れが見込まれ、大企業の設備投資先も国内からアジアにシフト。計画停電や資機材の調達難の影響は広範囲に広がりそうだ。震災の復旧・復興特需は限定的。
震災まで、東京圏では高層ビルの建築現場で大型クレーンが稼働する姿を多く見掛けるなど需要が底入れする兆しがあった。が、激しい揺れや液状化という災害が東京圏で起こったことで、その兆しは消え失せた。大手ゼネコン幹部は「しばらくは明るい兆しは見込めない」と肩を落とす。今後、発注者の間で、首都直下型の大震災に備えた東京一極集中の是非が真剣に問われるとみられる。
新規案件は、大手や中堅ゼネコンを中心に滞る見通し。特に厳しいのは、供給過多の分譲マンションとオフィスビルだろう。国土交通省が毎月発表する「建築着工統計調査」11年2月分によると、分譲マンションは前年同月比103%増の9420戸で、9カ月連続増加。とはいえ、これらはリーマン・ショックの前後に計画着工をいったん見合わせた案件が含まれる。こうした先延ばし案件が一巡すれば、足元の景況感に沿った厳しい需要動向が各社を直撃する。最大手の長谷工コーポレーションは、先行き不透明感がさらに高まった。得意の1物件400戸以上の大規模マンション施工は、2010年4月~12月まで9カ月間累計の受注高が127億円と前年の9カ月間に受注した560億円に及ばなかった。
反面、1物件400戸以下の受注高は前期を上回った。しかし、郊外のファミリー層向け大型物件の受注不振によって、2011年3月期の単体受注2900億円(前期比7%増)は達成微妙となった。震災で、新年度の2012年3月期の単体受注3000億円の大台回復は困難となった。リーマン・ショック後に経営再建を目指していた新興デベロッパーのマンション建設意欲は減退。エンドユーザーは建売りの戸建て指向が強く、マンションは駅近で、価格が相当魅力的でないと売れ残るので、デベロッパー側も慎重だ。超高層のタワー型や、オール電化というタイプにも電力供給不安というアゲインストの風が吹く。