最高益を見据えるトヨタが抱く「強烈な危機感」 グループ内で不正が続発、問われる企業統治
次に中国市場。原則、持ち分法適用会社の管轄であるため営業利益ではなく、最終利益に影響する。その中国では急速に電気自動車(EV)の普及が進んでいる。中国汽車工業協会(CAAM)によると、1~4月のEV販売台数は47万1000台と、市場全体(215万9000台)の2割を占めるまでになった。
今年4月に開かれた上海モーターショーでは、地場の中国メーカーが新型EVを多く出展し話題をさらった。ある大手自動車メーカーの幹部は「EVであることは大前提で、そのうえでソフトウェアやエンターテインメントなど機能を競う形になってきている」と危機感を隠さない。
EVに押されてガソリン車市場が縮小する中国で、EVに出遅れている日本メーカーは目下、苦戦を強いられている。EV専用車種で見ると、トヨタはSUBARUと共同開発した初の量産EV「bZ4X」に続き、中国のBYDとの共同開発の「bZ3」、レクサスからは「RZ」を投入して巻き返しを図る考えだ。
トヨタの前期のグローバルでのEV販売はわずか約3万7千台。これを今期20万台に増やす計画を示している。今期中にダイハツ工業やスズキと共同開発した商用軽EVを発売する国内、さらに世界最大のEV市場である中国での取り組みが、今期計画はもとより2026年までに年間150万台販売という目標達成を左右することになる。
強みのHVを中国でも拡販
もっとも、トヨタが中国市場で大きな期待をかけるのはEVではない。トヨタの佐藤恒治社長は「中国でのEVの普及スピードが速いので、精力的に取り組んでいきたい」としつつ、「ハイブリッド車(HV)の需要も底堅い。EVとHVで需要構造は異なるので、我々にとって強みになると思っている」と強調する。
初代「プリウス」では1台売るごとに赤字が膨らむ構造だったが、今ではトヨタにとってHVは収益源に育った。初代プリウスから現行の5代目までに、HVの原価を6分の1まで削減。北米で売るSUVタイプなら、台当たり利益でHVがガソリン車をしのぐという。中国市場では依然としてHVの人気も高く、HVで台数を積み上げられれば収益貢献は大きい。
北米と中国、そしてEVと懸案はある。とはいえ、トヨタの業績予想は基本的に保守的で知られ、台数計画はともかく、利益計画が大きく下振れる心配は少ない。むしろ、最大の課題は業績よりも、グループのガバナンス強化といっていい。
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