ところが、この30分が、10時間ぶっ続けとなる。
そんなわけで、私は書き始めたら止まらないので本を早く書き上げることができる。
[でも]先延ばしもやめられない。たぶん、ある種の儀式なんだと思う。
3~4時間書かないでいると、罪悪感を覚える。そして書き始めると止まらなくなる。
執筆が順調にはかどる日は、午前中は仕事に集中して夜に楽しみをとっておく。楽しく書く。いや楽しいと言うべきではない。苦痛でもある。……ちょっとしたトランス状態になる。
世界最高の作家でも執筆に悪戦苦闘
パウロ:10時間執筆したあとで、アドレナリンが大量に出るので、ベッドに行っても寝付くのに1時間はかかる。脇にノートパソコンを置いてメモをとるけど、頭に浮かんだことをメモするだけ。だから翌日には何の役にも立たない。
実際、ベッドでとったメモを使ったことがない。
『星の巡礼』を書いた頃から、このプロセスは変わらない。4~5時間書かないでいても罪悪感を持たないようにしたいけど、無理なんだ。
(ティムから)世界で最高の作家でも執筆に悪戦苦闘している。私はこの教訓をもっと学び直す必要がある。
ジャーナリスト出身ではない作家は、書くことは大変で、書き続けることはもっと大変だ、と言う。どうしたら簡単に書くことができるか? 多くの「偉大な」作家も同じ悩みを持っている。
絶好調な人――あらゆる逆境を克服してきたように見える人――でも、毎日苦労しているのだ。
ティム:初めて小説を書くときによくある過ちや弱点は?
パウロ:シンプルを心がけること。読者を信じること。読者は想像力が豊かだ。多くを語りすぎないこと。
ヒントを1つ与えれば、想像力が膨らむ。だから私は、自分の小説を映画化するのに気が進まない。映画はすべてを語ってしまうから。
観客は考える必要がない。『Aleph〈アリフ〉(未邦訳)』の冒頭で「私は今、ピレネーの自宅にいる。そこには1本のオークの木がある」と書いているように、ピレネーの家の様子を説明する必要はない。
大切な要素を織り込めばいいだけ。オークと私、そして語りかけている相手。それだけでいい。読者を信じよう。読者が空白を埋めてくれるので、多くを語る必要はない。
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