崖っぷち楽天モバイル「最強プラン」の破壊力 最高コスパとカバー率上昇の「鬼手」で大勝負

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これは楽天モバイルにとっては大きな戦略変更です。従来はコスト削減のためにKDDIに支払うパートナー費用を減らすことを重視していました。今回は真逆の方針として設備投資のためのキャッシュを節約し、つながりにくさを解消するためにパートナー費用を増やすことを決断したのです。

このあたりの状況を、少し詳しく数字で見てみます。5月12日に発表された楽天グループの2023年第1四半期(1~3月)決算報告によれば、楽天モバイルの基地局数はこの3か月で4302カ所を建設し、全国で8%も数が増えました。

しかしそれだけの設備投資をしても、人口カバー率は98.4%と0.4ポイントしか増えません。このペースで人口カバー率の向上を進めても、時間がかかります。一方で、楽天モバイルを使ってみて結果的に解約した人の解約理由の約3分の2は、通信品質が理由でした。

人口カバー率は99.9%に

この3年で利用者からのネガティブな声の絶対数は基地局の増加によって40分の1まで減りましたが、それでも楽天モバイルに踏み切れない原因としては、やはり「つながらない」が重要要素なのです。そこで基地局の建設を後回しにしてKDDIのネットワークを使うというのが今回の発表です。

結果として楽天の人口カバー率は、KDDIと同じ99.9%に変わります。

2015年に格安スマホの「楽天モバイル」を開始し、2019年に”第4のキャリア”として携帯電話事業に本格参入した(撮影:風間仁一郎)

それ以上に重要なことが、ローミング協定の見直しによる繁華街等の通信環境の改善です。実はこれまで楽天モバイルを試したけど、やめたという人の一番多い理由が「私の環境ではつながらない」という理由でした。職場がビルの奥まった場所だと電波が入らないとか、行きつけのお店が銀座の地下なのだけれど電波が届かないといった理由で「私の場合は楽天はだめだ」と判断した人が多かったのです。

では楽天モバイルに利用者から電波改善依頼があった場所がどこなのかというと、96%が「屋内、繁華街、地下」でした。つまり基地局の数を増やしても改善できず、プラチナバンドが手に入らないと改善しない要望項目だったわけです。

楽天の場合、いずれプラチナバンドが手に入るとしても状況の改善にはまだ時間がかかります。そこでKDDIとの協定見直しが「すぐに効く」という意味で状況改善の最善手となります。顧客にとってのネガティブ要因が論理的には大幅になくなるのです。

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