日本は米国の「血も涙もない経営」をまねるな

人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【後編】

中原:ところが、成長戦略の「企業の利益率向上」のいちばんの問題点は、日本が世界に誇っていい日本の企業風土の良さを理解しようとせず、アメリカ型の株主資本主義を志向しようとしていることです。

アメリカ流の「ROE最大化」を目指すべきではない

中原:アメリカの株主が重視するのが、企業の株主資本利益率(ROE)です。アベノミクスの成長戦略において、上場企業のROE向上は国策となっていて、株式市場では、ROEを銘柄採用の基準とした、株価指数が企業の選別を促しています。それもあって、直近の株主総会では、ROEを議案賛否の判断材料にする機関投資家が増えています。

 三井:要するに中原さんは、日本の企業がアメリカ企業の「血も涙もない経営」を、模倣するのを危惧されているわけですね?

中原:そのとおりです。日本企業はボーイングのようなROE40%台とか、マクドナルドの30%台をお手本にする必要はないのです。ROEの最大化を目指すアメリカ流の経営は、雇用の大幅削減という大きな犠牲の上に成り立っているからです。

さらに、ROEが高くなればなるほど、新規投資でそのROEを維持するのは難しくなります。ROEの向上を至上命題にしてしまうと、現在の本業以上に利益が出る新規分野を見つけ出さない限り、企業は新事業へ投資しなくなってしまうのです。

実のところ、アメリカの企業は投資よりも自社株買いや増配を優先したり、事業の売却や人員削減を進めたりしています。会社の持ち主であり、経営者の雇い主である株主が、1株当たり利益の増加とそれに伴うROEの向上を望むからです。

過去の日本企業は、株主への還元策を犠牲にして雇用を守り、規模の拡大を続けてきました。それがアメリカ型に変わっていくとしたら、それは企業のみならず、日本社会全体の変質をもたらすことになるのではないでしょうか。

政府は現在、企業が従業員の解雇をしやすくする方向で法改正を行おうとしています。解雇条件の緩和や株主重視など、日本企業のガバナンスを、アメリカ流に変えようとしているのです。これは大きな問題を含んでいると私は考えています。

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