日本は米国の「血も涙もない経営」をまねるな 人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【後編】
三井:日本企業の経営は、欧米企業と比べて優れているということでしょうか?
中原:正確に言えば、「優れている」のではなく、「人に優しい」と言ったほうがいいでしょう。それだから、利益率が低くなるのは当たり前なのです。
不況の時にも雇用を守ろうとする日本企業の経営は、好況の時に思い切った設備投資や、新規雇用の遅れにつながるというデメリットがあります。そのことが、日本の成長率の低下を招いたということは、率直に認めなければなりません。
そこで政府や企業を交えて議論してほしいのは、雇用を守るというメリットと成長率低下のデメリットを比較点検しながら、成長戦略につなげてほしいということです。
「失われた20年」という「欧米史観」に惑わされるな
三井:さきほど「失われた20年」が、日本社会の真相を歪めているとおっしゃいましたが、その点をもう少し説明していただけますか?
中原:日本社会にはいろいろな問題がありますが、それでも世界全体を見渡した時、日本ほど一般庶民が豊かに暮らしている国は珍しいと思います。日本人が「失われた20年」などと自虐的になってしまうのは、そう評価している人々の国と比べて日本の庶民がどれだけ良質な生活をしているのか、日本人自身がわかっていないからです。
実際に、2000年以降のアメリカでもヨーロッパでも、バブル景気に沸いていたのとは裏腹に、庶民の生活レベルは、少しずつ悪化の一途を辿っていました。さらには、その傾向を強烈に加速させたのが、2008年のリーマンショックに伴う、世界金融危機であったのは間違いありません。
経済的に急成長した中国などの新興国においても、そのほとんどでは格差が拡大し、一部の特権階級が富を独占するようになっています。日本のように、第二次大戦後に急成長しながら、「一億総中流」と自認するほど国内の格差が小さく留まってきた国は、世界的に見てきわめて特異なケースなのです。
日本人は自分たちの経済・社会に対して、もっと自信を持っていいのではないでしょうか。
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