村田製作所、連続2ケタ減益予想の裏にスマホ変調 中国スマホが底を打っても楽観視はできない

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通常であれば、部品の製造数量が増えて工場の操業度が改善されることなどで、値下げによる減益分をある程度吸収できる。だが足元は、在庫がたまっているため工場の操業度をあまり上げられず、値下げのマイナス影響を吸収できていない。

村田製作所の大森長門・セラミックコンデンサ事業本部本部長は4月28日に行われた決算説明会で、スマホ向けのMLCCについて「まだ強い注文は来ておらず、この夏にかけては在庫を消化する期間だ」と話した。依然電子部品メーカー側での在庫水準が高く、2023年度も厳しい状況が続きそうだ。

以前の水準に戻るには「数年かかる」

村田製作所が発表している、スマホの台数に換算したスマホ向け電子部品市場の需要予測は、2022年度に10.8億台だった。2023年度は11.1億台。増加するとはいえ、小幅にとどまる。

過去10年を振り返ると、ピークは2016年度の15.6億台。その後も2021年度までは13億~14億台をキープしていた。昨年度と今年度予想の数字はこの10年の傾向からすると明らかに異なる。

13億~14億台という以前の水準に戻るには、「数年かかる」と村田会長は話す。少なくとも「2024年度も急激な回復はない」との見方だ。「5G対応で利便性を体験できるアプリケーションがどれだけ出てくるかにも関係するが、スマホの買い替えサイクルが少し延びていることが影響している」(村田会長)。

ここ3年ほどの電子部品業界は、コロナ禍での巣ごもり特需でパソコンやスマホの買い替えが進んだ恩恵を享受したうえ、部品不足の中で電子部品の値下げ幅も小さかった。2022年度は円安が業績を下支えした。だが、スマホ需要の低空飛行は当面続く。電子部品メーカー各社の真の実力が問われる局面だ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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