【産業天気図・パルプ/紙】原油高や円安、需給緩和懸念で一部企業は早くも下方修正

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当面の国内紙パ業界は、需給とコストの両面でリスク要因が浮上しつつあり、グズつき気味の『曇り』模様か。
 足元の景気堅調はもちろん追い風。各社ほぼフル生産に近い状態だが、在庫が積み上がり始めたのが不安材料だ。需給関連でもう一つ懸念されるのが、前回記事でも指摘した割安な中国製品の流入増。中国では今期、大型新設備が相次いで稼働する計画(一部は稼働済み)で「中国内でさばけない余剰分が日本に流れ込む」と不安視されている。業界では現状、「流入は設備運転が本格化する来期か」(商社筋)との観測も広がってはいるが、遅かれ早かれ直面する問題であることに変わりはない。需給が緩めば、ほとんど業界一丸で昨夏から取り組み、前期末にようやく実現した主要洋紙の値上げ(5%程度)が帳消しないし、それに近い状態になる恐れがある。
 目下、需給緩和よりも深刻なのがコスト問題だ。原油価格は過去最高水準に達し、円安も原燃料を輸入に頼る製紙各社には逆風。日本製紙グループ本社や三島製紙、特種製紙、紀州製紙などは早くも期初の業績計画の見直しを余儀なくされた。業界は「原燃料高を価格転嫁したい」と異口同音だが、「輸入紙の流入を招きかねない」(製紙大手)との恐れから、安易な値上げはできないのが実情。比較的収益力の強い王子製紙や大王製紙、北越製紙なども、今後の原油や為替の動き次第では予想の見直しを迫られよう。『会社四季報』最新号(秋号)では、ほとんどの製紙メーカーについて、期初計画の利益達成は厳しいと見て予想を改めている。
 もう少し先の見通しとしては、大王が6月後半に突然打ち出した大型設備の新設計画も業界には大きな衝撃。完成は2007年度と先の話だが、需給バランスに影響するのは必至だ。一段の成長機会をうかがう北越も増設には前向きで、業界では「過剰供給による消耗戦が繰り返される」(製紙中堅)などの声が挙がっている。日本・王子の「2強」体制が出来たとはいえ、2社の影響下にない大王や北越の動向は依然として波乱要因で、製紙業界の今後は場合によっては『雨』ともなろう。
【内田史信記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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