なぜ人気化?「国産の小麦」が大躍進を遂げたワケ 岩手発の「もち小麦」はこう育てられてきた

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国産小麦が盛り上がっています。その立役者のひとつである「もち姫」を使った食パン(写真提供:白石食品工業)

いま、「国産小麦」が脚光を浴びていることをご存じだろうか。かつて輸入小麦より高い割に品質は劣る、とされたこともあるが、それはすっかり過去の話。もはや「国産小麦使用」というだけでは消費者の関心を引けなくなり、いつの間にか各地の特徴ある品種を売りにした商品開発がなされる時代に突入している。

背景には、もち小麦、超強力小麦、低アミロース小麦等、輸入小麦とは異なる性質を有する個性的な品種の登場がある。

実際、1973年に3.7%にまで低下していた小麦の自給率は、その後穏やかに回復し、2021年は17.0%となっている。小麦栽培に適した環境とはいえない日本において、地道に品種改良を続けてきた成果が実を結び始めていたのだ。

その一例として、日本が世界に先駆けて開発に成功した「もち小麦」の現状を探ると、意外な経緯が浮かび上がってきた。

輸入小麦に負けない国産品種が登場

小麦は多種多様な食品に加工されるが、日本における最大の用途はパンで全体の約40%、次いで麺用の約35%だ。

農水省がまとめた「麦をめぐる最近の動向(令和5年4月)」によると、輸入小麦5銘柄(品種)のうち、もっとも多いのがパン用のカナダ産「ウェスタン・レッド・スプリング」である。

これに加えて、パンと中華麺用のアメリカ産「ダーク・ノーザン・スプリング」、「ハード・レッド・ウィンター」、うどん用のオーストラリア産「スタンダード・ホワイト」、菓子用のアメリカ産「ウェスタン・ホワイト」で、これらで輸入のほとんどが占められている。

日本政府はこの外国産小麦5銘柄を一元管理してきた。これにより小麦の安定供給が実現しているわけだが、小麦粉の差別化が難しく、製粉会社における技術開発があまり進まず価格競争を引き起こしてきた。

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