だが、精神的に未熟な親の場合、これらはまず当てはまらない。
Cさんの母親は、きまじめだが思いやりはなく、子どもだったCさんの心身に虐待まがいの行為をすることもあった。Cさんは長い間耐えてきたが、成長して職場で表彰されたときも、同僚の前でけなされ、我慢の限界に達した。深く傷つき、同僚を前にいたたまれなかった。
数日間、Cさんは自分がどんなに傷つけられたかを母親にわかってもらおうと考え、手紙を書いて気持ちを伝え、この件について話し合いたいと頼んだ。これを読めば母親も、自身の無神経な行為がずっと続いてきたことを理解し、申し訳なかったと思ってくれるのでは?
だが、母親からは「なしのつぶて」。
心理カウンセラーである私のところに相談に来るようになってから、両親にいやな思いをさせられバカにされたりしたときは、その気持ちを私にきちんと伝えて、理にかなった形で問題を解決しようとがんばってきた。
母親は、Cさんが差し伸べる手をつねに振り払っていたが、Cさんの子どもである3人の孫とは接したいために、なんらかの反応を示してはいた。だが今度は違った。
「信じられないんですけど、なんの反応もなかったんです。怒られさえしませんでした」
子どもにもトラウマを与える負の連鎖
Cさんは、傷ついたうえにとまどってもいた。母親は社交的で、他人に親切にも寛大にもできる人だった。それがうわべだけなのはわかっていたが、それでCさんの気持ちがなぐさめられるわけではなかった。
Cさんの顔には悲しみと困惑が表れていた。
「あなたはお母さんと精神的に親密になろうとがんばってる。それは少しも間違ってないけど、お母さんには耐えがたいことなんだと思うの。あなたが率直に、正直に気持ちをぶつけても、お母さんはそれを受け止められないの」
親との良好な関係を求めて悲しみに沈むCさんに、私はこのように伝えた。
精神的に親密な関係を築いていくためには精神的に成熟していなければならないが、彼女の母親の精神は、そのレベルに達していなかったというだけのことだった。
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