日本の株式市場には、保有する資産の価値より安い価格で株を購入できる「お買い得」な企業が存在する。資産価値は貸借対照表上の簿価によって一般的には計測できるが、会計ルールの都合で帳簿に載らない(認識されない)資産がある。
その代表的な例が「賃貸不動産」の含み益だ。賃貸不動産は会計上、「取得原価主義」つまり取得する際に払った金額で財務諸表に認識される。その後、時価へ評価替えされることがないため、時間が経過するほど時価から乖離しやすい。
例えば、70年前に購入した都内の土地(当時1000円)が、現在でも帳簿上はそのまま1000円で評価されているケースがある。
不動産は一般的に時間の経過とともに価値が上昇する傾向にあるため、設立年度が古い企業は多額の含み益を抱えた賃貸不動産を持っていることが少なくない。
この賃貸等不動産の含み益が多い企業を調査し、トップ100社をランキングにした。データは金融を含む全上場企業の2023年4月24日現在の直近有価証券報告書から取得。保有不動産関連の時価情報が記載されている「賃貸等不動産関係の注記」の有無を確認し、開示があった企業を集計の対象とした(連結決算実施会社は連結ベース)。
トップ3の合計は11兆円オーバー
トップ100に入った企業の東証33業種分類を見ると、不動産業や陸運業が多くランクインする傾向があった。
トップ3は、三菱地所、住友不動産、三井不動産という順で不動産大手が独占した。3社合計の含み益は11兆円を超える。トップ100に入った残り97社の合計は16兆円。上位3社が100社合計の4割程度を占める計算だ。上位3社は設立から70年以上が経っているため、取得価格から大きく時価が乖離し、帳簿に載らない多額の含み益が発生したと考えられる。
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