神政連の中央本部は2022年6月にもLGBTQの認識をめぐって大きな批判を招いた。同性愛を「精神の障害、または依存症」と記した冊子を国会議員に配布したのだ。(詳細は神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」)。当時、神政連は東洋経済の取材に、冊子は大学教授の講演録を掲載しただけであり「神政連の意図に基づくものではない」と回答していた。
文書の発信は神政連埼玉県本部になっているが、関係者によると「実際に文案を作成したのは神政連中央本部の幹部」だという。
東洋経済はあらためて神政連中央本部に「2022年の取材時には、『LGBTQを精神の障害や依存症とする意図は神政連にはない』と回答していたが、今回の文書を読む限り、神政連も精神の障害であると認識しているのではないか」と質問した。しかし「回答は致しかねる」という返答だった。
文書を受け取った埼玉県内の神職は、「かつて神政連はマスコミからの非難をかわすため『冊子の論考の内容は神政連の見解ではない』などと弁解していた。しかし、文面を読むと真っ赤なうそだったことがわかる」と語る。
LGBTQ当事者の神社関係者もあきれる
当たり前すぎることだが、神職や神社関係者、あるいはその家族にもLGBTQの当事者はいる。LGBTQ当事者である神社関係者は、文書を読んであきれかえったという。そしてこう話した。
「神政連は、『神道にはLGBTQを差別する考えはない』と公式には述べている。神政連は、明治以降の家父長的な家族形態を勝手に『日本の伝統』だと思い込み、明治の価値観にそぐわないLGBTQや姓名の多様なあり方をないものとして扱おうとしている。伝統であれば差別が許されるわけではないし、ましてや、いつの時代にもあったはずの多様性を無視した偏向的な伝統観にこだわって、差別を扇動するなどあってはならない」
LGBTQは個人の政治信条や価値観、宗教観によって、受け止め方がさまざまに違う。さらに当事者の権利擁護について法律や条例が必要かどうか、「賛成・反対」どちらの立場もありうる。
しかし科学的に誤った内容をもとに「精神疾患」だと決めつけ、条例反対の投稿を呼びかけるのは全国8万社の神社を包括する宗教法人の関連団体として適切なのかどうか。
折しも国会では、神政連と関係が深い自民党が「LGBT理解増進法案」の議論を本格化させている。2021年に実施された衆議院選挙の際、200人以上が神政連から推薦を受けている中、果たして法案成立にこぎつけられるのか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら