脱会した宗教2世が「母に会えない」過酷な現実 エホバの証人と出会い、家族がばらばらに

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組織から排斥されたことで、身近な親類の訃報すらも伝えてもらえなかったと語る女性(記者撮影)
世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)をめぐる被害者救済新法は2022年12月の臨時国会で成立し、2023年1月5日に施行された。安倍晋三元首相を銃撃する事件を起こした山上徹也容疑者が統一教会の「宗教2世」だったことから同教団の被害が浮き彫りになり、救済新法に結びついた。
しかし宗教2世問題は、統一教会だけの話ではない。
2世当事者からの被害報告が多く聞こえてくるのがキリスト教系の新宗教「エホバの証人」(以下、エホバ)だ。輸血の禁止をはじめ、進学や就職を制限されるなど人生の選択肢が著しく狭められることに、少なくない2世が苦しみを訴えている。原理主義的な縛りに耐えられず脱会すると、家族や友人たちとの交流が絶たれ、孤立してしまうところにも特徴がある。
エホバの実態に迫るリポート前編は、家族と断絶された女性の悲痛に目を向ける。(後編「宗教虐待で心を病んだ兄が親から絶縁される残酷」

14年もの間会えない母と娘

14年間、一度も会えていない母と娘がいる。

「親孝行がしたい。それだけです。歳をとってきた母のことが心配なんです」

神奈川県在住の久美子さん(41歳、仮名)は、63歳になる母親への思いを募らせている。久美子さんは14年もの間、母親と会うことはおろか電話やメールすらできていない。久美子さんが「エホバの証人」(以下、エホバ)から排斥(組織から除名処分)されたからだ。

キリスト教を母体とするエホバは、アメリカに本部を置く新宗教だ。日本支部は「ものみの塔聖書冊子協会」という名称で政府から宗教法人として認可されている。日本支部によれば、国内で約21万人が伝道(布教)活動をしているという。

久美子さんの母親はエホバの信者。娘の久美子さんはいわゆる「宗教2世」だ。母親は久美子さんが3歳のときに入信し、久美子さんが物心つく頃には母親と一緒に集会に参加し、布教活動に同行するようになっていた。

11歳でバプテスマ(洗礼)を受けて以降は、夏休みなどの長期休みに月60時間(当時)の布教活動(補助開拓奉仕)を実践した。街頭に立ったり、個別宅を訪問したりする布教活動は、平日は学校から帰って19時頃まで、土日は多い日で1日8時間ほどに及んだ。友達と遊んだり、部活動に精を出すことはできなかった。久美子さん自身は「信じる、信じないではなく、それが日常であり、普通のことだった」と当時を振り返る。

中学卒業後は通信制の高校に入学した。アルバイトをかけもちして家計を支えながら、布教活動に時間を割くためだ。高校入学以降は月90時間(当時)の布教活動が義務づけられる「開拓者」となった。

「交際」が教義違反で排斥に

献身的に布教活動をしていた久美子さんが脱会を迫られるきっかけとなったのは、エホバ信者との交際だ。エホバでは結婚前の性交渉は禁じられており、久美子さんはその教義に反してしまった。通信制の大学に通っていた、19歳の時だ。

久美子さんは、教義に反したことを母親に打ち明けた。母親は、地域の信者の集まり(会衆)に報告し、久美子さんは会衆の審理委員会で審理されることになった。「罪を繰り返そうとは思っていなかった。反省もしていた」と言う久美子さんだが、審理の結果、排斥されることが決まった。

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