14年もの間会えない母と娘
14年間、一度も会えていない母と娘がいる。
「親孝行がしたい。それだけです。歳をとってきた母のことが心配なんです」
神奈川県在住の久美子さん(41歳、仮名)は、63歳になる母親への思いを募らせている。久美子さんは14年もの間、母親と会うことはおろか電話やメールすらできていない。久美子さんが「エホバの証人」(以下、エホバ)から排斥(組織から除名処分)されたからだ。
キリスト教を母体とするエホバは、アメリカに本部を置く新宗教だ。日本支部は「ものみの塔聖書冊子協会」という名称で政府から宗教法人として認可されている。日本支部によれば、国内で約21万人が伝道(布教)活動をしているという。
久美子さんの母親はエホバの信者。娘の久美子さんはいわゆる「宗教2世」だ。母親は久美子さんが3歳のときに入信し、久美子さんが物心つく頃には母親と一緒に集会に参加し、布教活動に同行するようになっていた。
11歳でバプテスマ(洗礼)を受けて以降は、夏休みなどの長期休みに月60時間(当時)の布教活動(補助開拓奉仕)を実践した。街頭に立ったり、個別宅を訪問したりする布教活動は、平日は学校から帰って19時頃まで、土日は多い日で1日8時間ほどに及んだ。友達と遊んだり、部活動に精を出すことはできなかった。久美子さん自身は「信じる、信じないではなく、それが日常であり、普通のことだった」と当時を振り返る。
中学卒業後は通信制の高校に入学した。アルバイトをかけもちして家計を支えながら、布教活動に時間を割くためだ。高校入学以降は月90時間(当時)の布教活動が義務づけられる「開拓者」となった。
「交際」が教義違反で排斥に
献身的に布教活動をしていた久美子さんが脱会を迫られるきっかけとなったのは、エホバ信者との交際だ。エホバでは結婚前の性交渉は禁じられており、久美子さんはその教義に反してしまった。通信制の大学に通っていた、19歳の時だ。
久美子さんは、教義に反したことを母親に打ち明けた。母親は、地域の信者の集まり(会衆)に報告し、久美子さんは会衆の審理委員会で審理されることになった。「罪を繰り返そうとは思っていなかった。反省もしていた」と言う久美子さんだが、審理の結果、排斥されることが決まった。
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