脱会した宗教2世が「母に会えない」過酷な現実 エホバの証人と出会い、家族がばらばらに

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ただ、久美子さんは組織から排斥された今でも周囲の信者たちには感謝しているという。

宗教活動に反対していた父親は、久美子さんが小学5年生の時に母親と離婚した。離婚後、母と娘たちの暮らしを支えていたのが周囲の信者たちだった。

「生活が苦しかったので、同じ会衆の人からいろんな場面で助けてもらった。やはり信者である姉妹からは中学の制服をもらったり、家を借りるときに保証人になってもらったり。会衆の人たちがいなかったらとても暮らせていませんでした」

それほど久美子さんにとって信者たちの存在は大きかった。エホバ2世は、布教活動が最優先される結果、進学や就労、友人関係が制限される場合が多い。それゆえに友人や仲間といえる関係は、信者以外に築きにくい。そうした閉ざされた環境で育った2世が組織や家族から排除される排斥は、本人を社会から孤立させることに等しい。

「3歳から生活のすべてだったエホバから排斥され、家族や親友からは忌避されてしまいました。会社では新卒入社ではないから同期もいないし、高校の部活動も大学のサークル仲間ももちろんいない。自分のホームと言える場所がなかった」(久美子さん)

精神的にも経済的にも本人を追い詰める

排斥による孤立は、久美子さんだけではない。宗教2世の自助グループを主宰する横道誠氏(京都府立大学准教授)はエホバの2世で、多くの当事者たちの声を聞いてきた。横道氏は排斥について次のように話す。

「排斥は精神的にも経済的にも本人を追い詰め、絶望して鬱状態になる人もいます。これまでの人間関係が教団と家族だけという世界で生きてきたのに、そこから無視されながら生きなければならないのは、とても残酷なことです」

排斥された人は同居する家族であっても、最低限の会話しかできない。家族から、家を出ることを促されるケースすらある。

久美子さんは19歳で排斥されて以降、親に頼ることができずに生きてきた。現在は都内のIT企業で働きながら、幼少期から続けていたクラシック音楽のグループにも参加している。並大抵の努力では就職することも、音楽活動することもかなわなかったはずだ。

今では同じ悩みを共有できるエホバ2世の集まりに参加することが心の支えとなっている。ただ、母への思いは消えない。一時は自分を無視し続ける母親に怒りを覚えていたが、「親のせいではなく、母は組織の言うことを鵜呑みにしているだけだ」と思うようになった。

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