「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない

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徘徊とは「あてもなく歩きまわること」を意味する言葉であるが、杉山さんの話によると、認知症の方の徘徊の中には、ちゃんと目的を持って考えながら歩いていて、迷ったからといって誰にでも簡単に声はかけないケースもあるという。この視点は、私の頭からスッポリと抜け落ちていたものだった。

コンビニ、ガソリンスタンド、交番を探す

「あと道に迷ったとき、ガソリンスタンドがあれば迷わず飛び込みます。ガソリンスタンドの店員さんも、しっかりと対応してくれますよ。ガソリンを入れない私にまで親切にしてくれるなんて最高ですよね」と、杉山さんの少しおどけた言い方に、それまで張り詰めていた会場の空気が一気に緩んだ。

「本当は交番がベストです。ただ交番は、お巡りさんがいないときが多いですよね。だから私は道に迷ったら、コンビニ、ガソリンスタンド、そして交番の順にそれらを探し求めて歩きます。なぜなら、私は普通の人であり続けたいから」という杉山さんの締めくくりの言葉に、客席からは大きな拍手が湧き起こった。

さようならがくるまえに 認知症ケアの現場から
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やはり経験に勝るものはなく、今回の講演を杉山さんにお願いして本当に良かった。いくら私が認知症について学んだとしても、認知症の方の気持ちすべてを理解することは不可能なのだ。

人間とは知らないものに対して恐怖心を抱きやすい生き物だ。

私は、杉山さんが講演会で話してくれた内容を、その後さまざまな場で伝えるようになった。そうやって、認知症の方の思いと我々が見ている世界のギャップを埋めることが、認知症に対する誤解を減らしていく近道となるだろう。

本人ミーティング
認知症の本人が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う場です。「集って楽しい!」に加えて、本人だからこその気づきや意見を本人同士で語り合い、それらを地域に伝えていくための集まりです。
引用:厚生労働省
川畑 智 理学療法士

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かわばた さとし / Satoshi Kawabata

2002年、熊本リハビリテーション学院卒業後、国家資格「理学療法士」を取得。急性期・回復期・維持期のリハビリに携わる。病院・施設勤務の経験と、地域づくりやまちづくり、社会福祉協議会勤務の経験を活かし、水俣病発生地域における介護予防事業(環境省事業)や、熊本県認知症予防モデル事業プログラムの開発を行う。2015年、株式会社Re学を設立。熊本県を拠点に、病院・施設における認知症予防や認知症ケアの実践に取り組むと共に、国内外における地域福祉政策携わる。

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