日本を「漁業大国」と思っている人が時代遅れな訳 魚の値段がどんどん高くなる2つの理由を解説

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日本とノルウェーの資源管理を比較すると、日本の問題が明らかになります。ノルウェーの資源管理は、2020年に70年ぶりの改正といわれた漁業法にも参考にされました。比較に際し、ノルウェーと日本は環境が違うといわれることがあります。しかしながら違うのは水産資源管理を適切に実施できているか否かという点で、その違いが「繁栄」と「衰退」という対照的な結果を招いています。

魚が高くなる2つの異なる理由

魚の価格が高くなったなと感じられている方は少なくないと思います。一尾、1杯100円で購入できていたサンマやスルメイカは、ほぼ姿を消しました。たとえ安いなと思っても、よく見るとそれらはかつて購入していたサイズより小さいはずです。切り身にしても、同様に当たり前のように一切100円で販売されていたサケもほぼ姿を消しています。

水産物の価格上昇には2つの理由があります。1つは輸入水産物の価格上昇です。
 

上のグラフをご覧ください。輸入水産物の単価が上昇を続けていることがわかります。2020年はコロナの影響で一時的に前年より下がりましたが、その後は再び上昇。2022年には、円安という要因も加わり、初めてキロ900円を超えています。

価格上昇の背景には、世界的な水産物の需要と人口の増加があります。短期的には輸入価格の凸凹はあっても、中長期的には上昇していく傾向にあります。そして輸入水産物の価格の上昇は、われわれの生活にも直接影響しています。

上のグラフはタコの小売価格です。タコの2021年の輸入数量は約2.6万トン、国内の漁獲は約2.7万トンと半々でした。タコの小売価格は上昇を続け2022年の価格は、2013年に比べて8割高になっています。

これはほんの一例にすぎませんが、輸入品の価格上昇は、小売価格や外食の価格に転嫁せざるを得ません。それが難しい場合は、輸入数量が減少していくことになります。このため、輸入水産物に関しては、数量は減少、輸入単価は上昇が止まりません。

この傾向は、ますます進んでいくことが容易に想像できます。輸入数量のピークは2001年の382万トンでしたが、2022年は222万トンと約4割減少しています。

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