日本を「漁業大国」と思っている人が時代遅れな訳 魚の値段がどんどん高くなる2つの理由を解説

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かつて日本は世界最大の水産物輸入国でした。しかしそれもアメリカ、中国をはじめ各国の輸入が増える前の話です。筆者は20年以上最前線で魚の買い付けをしてきましたが、以前のように日本主導で買い付けできる時代は完全に終わりました。

価格が上がる理由その2 国内の成長乱獲

輸入水産物の価格が上昇する理由は、わかりやすいと思います。しかし水産物価格が上昇する理由には、もう1つ大きな理由があります。それは、資源管理が機能していないために起こる「成長乱獲」。つまり小さな魚を獲ってしまうことにあります。これはいわば「人災」です。

資源を考えて、小さな魚が釣れたら逃がす釣り人の方は少なくないはずです。小さな魚まで獲ってしまったら、魚は成熟して卵を産んで子孫を残す機会が奪われてしまいます。また、小さな魚は大きな魚に比べて食べられる部分(可食部)が多くありません。旬の時期でもサバなどは未成魚は脂がのらないので、あまりおいしくありません。

小さく可食部がほとんどない高級魚のキチジ(写真:筆者提供)

消費者は、おいしくて安い魚を求めます。しかしながら、大きくなる前の魚を獲りすぎれば、海の中には小さな魚の比率が高くなってしまいます。

消費者はおいしい大きな魚を求める一方で、日本の海の中は成長乱獲が起きていて小さな魚ばかりになっています。このため、大きな魚は希少で価格が高くなります。これが「漁業者に安く、消費者に高い」という最悪の組み合わせになっており、その影響が消費者に襲いかかっているのです。

典型的な例として、日本の場合は食用にならない「ジャミ」や「ローソク」などと呼ばれる小さなサバまで容赦なく漁獲されています。小さなサバは、小売店などには回らず、冷凍されて養殖のエサになったり、価格が安いという理由だけで、アフリカなどの市場に輸出されています。結果として消費者が目にする機会はほとんどありません。

毎年99%のサバが食用になるノルウェー産のサバに対して、日本の場合は30~40%(2021年は46.1%・農水省)ものサバが養殖のエサ(非食用)向けになっています。科学的根拠に基づく漁獲枠の設定と、漁船ごとの漁獲枠の配分にして、大きくしてから獲る仕組みにすればよいのですが、まだそうなっていません。

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