緊急提言 こうすれば財政破綻を回避できる 竹中平蔵・慶応義塾大学教授
今、変な増税をすると低福祉重税国家になる
日本経済の余命はあと数年。これからの舵取りで日本の運命が決まる。現在のペースで国の借金が増え続けると、数年以内に財政赤字の累計が家計の純金融資産を上回ることになる。これはシンボリックな意味を持つ可能性が高い。
こうした問題意識は多くの人が持っているが、その処方箋が間違っている。現政権の致命的な問題点は、マクロ経済運営という概念がないことだ。しかも欠陥マニフェストを引きずっている。そのため、なし崩し的に増税せざるをえなくなりつつあるが、ここで変な増税をすると取り返しがつかなくなる。日本が低福祉重税国家になってしまう。
いちばん重要な点は、消費税の税収を何に使うかだ。使い道は四つある。(1)財政赤字を埋める。つまりプライマリーバランス(基礎的財政収支)を回復するために使う。(2)高齢化に伴う社会保障費の自然増を賄う。(3)現在の手厚くない福祉を充実させる。(4)法人税引き下げやTPP(環太平洋経済連携協定)対策費など、社会保障以外の政策に使う。
この四つを全部消費税で賄おうとすれば、税率は25~30%になってしまう。これを国民が受け入れるとは思えない。財政再建のためにはまず、増税よりも経済をよくすることに注力すべきだ。2003年から07年の間に、日本のプライマリーバランスの赤字は28兆円から6兆円まで下がった。22兆円の赤字縮小は、消費税に直せば9%分に当たる。これは不良債権処理や郵政民営化などの規制緩和によって経済が活性化した結果だ。
2番目に重要なのが歳出削減。小泉内閣のときに、社会保障費は毎年1兆円増えるところを、8000億円の増加に抑えた。それと同じことをしなければならない。年収の高い高齢者の年金を削減するなどすれば、削減は可能だ。そして消費税率引き上げの前に、公務員の人件費を2割下げる。そうすれば約5・5兆円、消費税2・5%分が浮く。