「娘が鉛のように重い」母がもうダメと悟った瞬間 「不登校の初期」に親ができることとは何か

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「自己実現のはじまりは、悪のかたちをとってあらわれる」(『子どもと悪』岩波現代文庫)。心理学者の故・河合隼雄さんの言葉です。

大人が望むような子ども像に反するかたちでその子の個性があらわれてきて、親や先生や社会とぶつかったけれど、やがて自立したときに「あのことがあったから、いまの私がある」という宝物のような経験になっていることがあります。いまの自分にたどりつくには、「悪」や「問題」と思っていたことが、実はなくてはならないものだったというのです。

親を試すような困った行動

いわゆる「いい子」や「優等生タイプ」の子どもが息切れを起こして学校に行けなくなるのはめずらしいことではありません。

「もともとどんなお子さんでしたか?」と聞くと、小さいころから手がかからず、親の言うことをよく聞き、自己主張もあまりせず、友だちとも仲よくやれて勉強もできた、という子がとても多いのです。

そんな子どもがはじめて自分自身の本質的な課題にぶつかり、それを解決しようともがくとき、親にひどく手をかけさせるような困った行動が出はじめます。激しい感情を、ぶつけてくる、反抗的になる、荒れに荒れる、赤ちゃん返りをするなど、「いい子じゃない自分」でいても親が見捨てないかどうかを試すような行動を突きつけてくるのです。このとき大人が、その行動を否定したり責めたりすると、「やっぱりいい子じゃないとダメなんだ」という失望につながって、解決が難しくなることがあります。

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お母さんは、そんな子どもの要求がなんとなくわかったりすることもありますが、お父さんは「なぜこんなに悪くなってしまったんだ?」とただただ驚いて、受け入れられないことが少なくありません。

そんなとき、子どもが突きつけてくる課題にどう応えたらいいのかを親と一緒に考えてくれる人が身近にいると、親の苦しさもだいふ軽減されるのではないでしょうか。

その子のことをいちばんわかっているのは、やはり親なのです。親は「わが子の専門家」です。そして、私たちカウンセラーは不登校の専門家です。私たちの強みは、たくさんの不登校の子どもたちと出会い、サポートしてきた経験と知識です。アイデアもいろいろもっています。

「わが子の専門家」である親と不登校の専門家である私たちがタッグを組めば、強力なサポーターになれるのではないかと思っています。苦しいとき、何をどうしたらいいかわからなくなったとき、ぜひ地域や学校のカウンセラーに相談してみてください。(霜村麦)

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