日の丸「有機EL」、技術は世界唯一でも必然の完敗 国策企業・JOLED破綻で歴史はまた繰り返す?

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ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレー事業が一緒になって誕生したJDIとJOLEDはともに、経済産業省が各メーカーの事業統合を推進して誕生させた国策会社だ。当時から「ゾンビ事業の延命」と厳しい声は多く、設立の意義が問われていた。また有機EL市場はその時から韓国の独壇場。今は中国が追い上げる構図となっている。

有機EL生産の国別シェア

「ソニーとパナソニックが有機ELディスプレーからの撤退を決めた以上、JOLEDを設立しなければ、すでに両社の技術は消えていた」

JOLEDやJDIの設立に関わった産業創成アドバイザリーの佐藤文昭会長は、設立の意義をそう強調する。そのうえで「JOLEDに限らず、日本の生産技術力が落ちている。ディスプレーや半導体の技術者は40~60代が多く、世代交代が進んでいない」と懸念する。

消えゆく印刷方式の技術

JDIは4月10日、中国のディスプレーメーカー大手・HKCとの提携を発表した。JDIが量産技術を確立した次世代有機ELの工場を、HKCと共同で建設し2025年内の量産開始を目指すという。次世代品は「世界初、世界一」の技術をうたうが、独自で生産ラインを立ち上げる余力はJDIにない。

「JDIに適正なIP(知的財産)や技術移転の対価が支払われるようなスキームを構築する必要がある。2025年の量産開始はハードルが高そうだから、時間との勝負になるだろう」。みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは期待する。

JOLEDの従業員380人中、約100人はJDIへ転籍して開発を続ける。印刷方式のIPもJDIが保有することになるが、「今は次世代有機ELに集中し、印刷方式の開発は行わない方針」(JDI)だ。

転籍社員は次世代有機ELの開発現場で新たな居場所を見つける必要がある。JOLEDの工場で働いてきた従業員など280人は、工場閉鎖に伴い解雇となる。彼らが活躍の場を求めるなら、中国や韓国のメーカーなど選択肢は限られる。

「印刷方式の技術、生産ともに世界でいちばん進んでいるのがJOLED。これから韓国や中国のメーカーも印刷方式の開発を進めることになるだろう」(城戸教授)。海外に流出した人材が海外メーカーの技術発展を担うという、これまでの歴史をまた繰り返すのか。

日本から世界最先端の印刷方式の有機ELディスプレー工場が消え、技術開発も凍結される――。世界中のライバルたちと肩を並べて戦うこともなく、「日の丸有機EL」は敗戦処理に追われている。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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