日の丸「有機EL」、技術は世界唯一でも必然の完敗 国策企業・JOLED破綻で歴史はまた繰り返す?

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2019年、JOLEDは石川県能美市で世界初となる印刷方式の量産ラインを稼働させる。この能美工場は、JDIが生産休止したスマホ用パネルの生産ラインを活用していた。ハイエンドモニターや車載向けなどをターゲット市場に想定し、まずは20型前後の中型パネルの生産から開始。並行して大型パネル開発も進める計画だった。

最大市場のiPhone向けを狙わなかったのは価格競争を避けるためだが、それ以前に「印刷方式では精細度で蒸着方式に劣る」(城戸教授)。スマホ用に不向きとされた印刷方式は、テレビなどの大型パネル用が期待されてきた。しかしJDIが使っていたスマホ用パネル生産ラインでは生産効率が悪すぎた。

JOLEDが量産技術を確立できずに苦しんでいる間に、サムスンは蒸着方式でも中型パネルを量産できるようになった。今後はパソコンやゲーミングモニターにも有機ELを採用するとみられる。大型パネル開発が進まぬまま、JOLEDが差別化できる居場所は消えた。

日本勢「脱落の歴史」

有機ELディスプレーは日本が育ててきた技術だ。2007年にはソニーが世界初の有機ELテレビを発売して市場をリードした。しかしソニーで開発を率いてきた占部哲夫・元業務執行役員は、「有機ELテレビに220億円の設備投資が決まったが、リーマンショックでテレビが売れずに余裕がなくなった」と振り返る。

ソニーの有機EL
2007年、世界初の有機ELテレビをソニーが発表した。画面サイズは11インチと小さかったが、3ミリメートルの薄さが特徴だった(撮影:尾形文繁)

その後は業務用の有機ELモニタを展開していたが、ニッチ製品だけに長くは続かなかった。「自社商品向けに新しい技術を開発する垂直統合モデルがソニーの強みだった」(占部氏)。裏を返せば社内で需要がなければ、研究開発を続ける道は閉ざされる。

競争から脱落した日本勢はソニーだけではない。サムスンSDIとの合弁会社を設立していたNECは、2004年の段階で撤退している。この時、合弁会社の全株式を関連特許とともにサムスンSDIに譲渡したことで、サムスンの有機ELの技術が飛躍的に向上したとされる。

2009年、サムスンが自社スマホ「ギャラクシー」に有機ELディスプレーを搭載。日本人技術者の多くが「まだ無理」と思っていた蒸着方式で、量産に成功した。その後、アメリカのアップルが2018年発売モデルに、iPhoneの上位機種で有機ELディスプレーを採用した。

iPhone向けに高精細な液晶ディスプレーを提供していたJDIも、有機ELディスプレーの開発を手がけていた。だが、量産にはほど遠いレベルだった。そこで2017年、JOLEDの子会社化を前提に同社の東入来信博会長をJDI社長に招聘。有機EL事業の強化を宣言したが、資金的余力がなく1年後に子会社計画を白紙撤回した。

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