中国のディスプレーパネル大手のTCL華星光電技術(CSOT)が、「印刷方式」による大型有機ELディスプレー(OLED)の世界初の量産実現に近づいている。11月16日、同社のCOO(最高執行責任者)を務める趙軍氏が財新を含むメディアの取材に応じ、「印刷方式OLEDの量産プロジェクトは計画通りに進んでいる」と明かした。
CSOTは中国のテレビ大手、TCL科技集団の子会社だ。2021年4月、TCL科技集団は第三者割当増資で最大120億元(約2150億円)を調達し、広東省広州市に酸化物半導体を用いた第8.6世代の液晶パネル生産ラインを建設すると発表。と同時に、印刷方式による第8.5世代のOLEDパネル生産ラインの建設を検討していると公表した。財新記者の取材によれば、印刷方式OLEDの工場建設は2022年に始まる見通しだ。
OLEDパネルは液晶パネルよりもさらに薄く、画面を曲面にしたり折り曲げたりできるフレキシブルパネルの製造も可能だ。小型パネルの市場ではOLEDのシェアが年々高まっており、なかでもスマートフォンのハイエンド機種ではすでにOLEDが主流になっている。
日本のJOLEDとの資本提携に300億円
一方、主にテレビ向けの大型パネルでは、OLEDのシェアは伸び悩んでいる。大型OLEDパネルの供給は、韓国メーカーのLGディスプレイによる事実上の1社独占が続いている。だが、LGが採用する「蒸着方式」での製造は大幅なコストダウンが難しい。CSOTの趙氏によれば、テレビ向けパネル市場におけるOLEDのシェアは5%に満たないという。
そこでCSOTは、印刷方式を武器にしてLGディスプレイの独占を打ち破ろうともくろんでいる。同社の説明によれば、印刷方式は蒸着方式に比べて製造プロセスがシンプルで、コスト低減や歩留まり向上などに有利だ。とはいえ新しい技術だけに、材料、製造装置、工程管理などに高度なノウハウが求められるという。
印刷方式OLEDの開発は、もともと日本の有機ELパネルメーカーのJOLED(ジェイオーレッド)が先行しており、2021年3月に初の量産出荷を開始した。だが、その製品は(医療用モニター向けなどの)中型パネルに限られている。TCL科技集団は2020年、総額300億円を投じてJOLEDと資本業務提携契約を結び、技術面での協力関係を深めていた。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は11月17日
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