デフレギャップは解消、もう原発は造れない--『知らないと恥をかく世界の大問題2』を書いた池上彰氏(ジャーナリスト)に聞く
「大きく変わる世界の潮流を読む」(第7章のタイトル)はずが、その視座である足元の日本が大きく揺らいだ。わかりやすさが魅力の「池上解説」で、これからの日本を、世界を読み解く。
──3月11日の地震にはどこで遭遇しましたか。
米国から帰国の飛行機の中。成田空港が閉鎖されたので上空で待機するとアナウンスがあり、しばらく旋回飛行した後、羽田に降りた。帰宅には車で5時間半かかった。2万冊の蔵書が崩れて、仕事場は手のつけられない状態だった。
──大震災のインパクトは?
大まかに言って二つに集約される。これだけの大きな被害が出たことによって、日本はデフレから脱出する。これまでは供給に対して需要が追いつかないデフレだった。今回、供給能力が大きく失われ、その一方で、買いだめが起こった。また復興需要もある。デフレギャップは一挙に解消して、インフレになっていくと考えたほうがいい。
東北の太平洋沿岸は、終戦直後の経済段階に戻った。66年前に焼け野原からここまでやってきた。その時代からやり直すことになる。
──もう一つとは?
厄介なのが破壊された原子力発電所だ。なお刻々事態が変化しているので、少なくともこの事態が収まらないかぎりは、復興も何もあったものではない。
この際、放射線が収まった以降の視点で考える。日本はこれから原子力で売っていこうとしていたが、そのビジネスは全部止まってしまう。それどころか、もう日本国内で新しい原発は造れないだろう。