デフレギャップは解消、もう原発は造れない--『知らないと恥をかく世界の大問題2』を書いた池上彰氏(ジャーナリスト)に聞く

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 そうなると、関東地方の電力需要は賄えない。止まっている火力発電所を動かすことによって、目先5月の需要は賄えるとしても、8月は完全にもたない。エアコンを使い、高校野球を見て過ごしてきた今までも、綱渡りだった。それが供給量の2割が失われたのだ。

電気が豊富に使えない中で、何ができるか。東京電力管内では、人々の生活が根本的に変わってくる。電気は総需要抑制、大口規制という形で、企業や業界に割り当てがされる。関東甲信越で産業の空洞化が進む可能性がある。

ただし、供給が2割減るということは、25年前の電気の需要量に見合う。あの頃はその供給量でやっていた。当時オール電化の家などなかったし、現在はあまりに便利になりすぎたのだ。暮し方から変えなければいけない。

──ライフスタイルが変わってくるわけです。

今は多くの人がさっさと家に帰っている。残業をやってはいられないし、そうならざるをえない。家庭を大事にするべきで、いつまでも会社にいるほうが本来おかしかった。サマータイム導入も、今まで何回も話として出ては消えていったが、この際やらざるをえなくなる。

──原発事故は世界の原発事情も変えそうです。

COP(気候変動枠組み条約締結国会議)17が南アフリカで11~12月に開かれる。COP16で一応、各国の二酸化炭素削減目標が出たから、その目標値を守らせる仕組みをどう作っていくか、さらに厳しいものにするためにどうすればいいのか、が議論されるはずだった。

そのため、多くの国が原発を造ることによって二酸化炭素を削減しようと考えていたから、今回の事故で目算が狂う。すでに中国は原発計画をストップした。日本も東電の火力発電所をすべて運転するとなると、「鳩山公約」の25%達成はとても無理だ。

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