ヨーロッパから見ると元植民地だったという歴史的事実があるだけで、実際にはアジアは遠く、特に東南アジアの適正な投資先は彼らにはとても選択できませんし、実際これまでの進出事例も限定的と言わざるを得ない。植民地としてのアジアは理解できても、対等なビジネスパートナー、あるいは投資先としてのアジアには理解が及んでいないのです。
これに比して、日本は中国よりはるかに早くから民間ベースでも、国ベースでも、さらに言えばADB(アジア開発銀行)まで使って、それこそふんだんに投資、オペレーションをしてきた実績があるわけです。
つまり、日本は別にチャイナマネーの背中に乗らなくても自力でアジア(特に東南アジア)でやっていけるノウハウやコネクションを十分に持っている。ですから置かれている状況はイギリス、ドイツなどと全く異なるわけです。
このあたりの事情は、実際に東南アジアでお仕事をされている方は肌をもって感じられるのではないでしょうか(シンガポールが良い例で、元イギリスの植民地ではありますが、ビジネスにおける足跡は言語が英語、と言う以外にはほとんどありません。イギリス式ハイティーが高級ホテルにその名残をとどめている位でしょうか)。
外務省や財務省をなじるマスコミは、現場を知らない
ADBの出資者としては欧州勢はドイツがかろうじて5%台の出資比率を持っているだけで、要するに欧州勢はアジアでの投資戦略に大きく後れを取っていたことがあって、これ幸いとばかりに今回の早期の参加決断につながってくるのです。
すでに、ADBで地位を築いているアメリカ、カナダなどが参加しないのはある意味当然で(政治的な戦略で今後参加する可能性はある)、オーストラリアが重なったくらいですが、同国の輸出先第1位が中国であることからすればこれはある種当然でしょう。
さらにAIIBに参加表明している国を見て頂くと、それこそベトナムやミャンマー、バングラデッシュなど、むしろ投資や経済援助を今も受けていて、今後も援助が必要だという立場の国々が多く参加していることがわかります。
彼らは一体何をするつもりなのでしょうか? 自分で少し出資をしておいて、自分の国のインフラ投資にこのAIIBを誘導するつもりなのでしょうか。考えにくいですが、公正さを貫くなら、出資をするからにはAIIBからの融資は自国は一切受けない、と言うのが筋でしょう。
しかし、現在それすらどうするか決まっていないのに日本が何千億円も出資するなんて話になり得ませんし、こんな話はアメリカでも当然議会は通りません。
ちょっと考えただけでも、これだけ矛盾だらけでわけがわからん、へんちくりんな仕組みのAIIBに日本政府が参加しないからといって、それを外務省、財務省による情報取得ミス、となじっているメディアはむしろ、本当に現場を知らない、ということを露呈しているとも言えるでしょう。
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