スマホで「雑誌読み放題」人気はどこまで? ドコモ「dマガジン」に主要誌が大挙参加
出版社の理解と端末の進化によって、一応の事業化の目途はついた。そこで、ドコモは2014年1月から出版社との交渉を始めたが、外資系出版社が早々に提供を決める一方で、依然として難色を示す会社も多かった。「味方と思ってもらえるまでに時間がかかった」(那須氏)からだ。ただ、iモード時代も含めてドコモと出版社の付き合いは長い。雑誌のコンテンツを潰すものではなく、読まれるための仕組みであること、収益を還元できることなども説明しつつ、交渉を進めていった。
読み放題サービスとしては、ソフトバンク傘下の「ビューン」(2010年6月開始。アップル端末向け月額480円、アンドロイド向け324円。雑誌とコミック。雑誌は72誌)やKDDIの「ブックパス」(2012年12月開始。月額606円。電子書籍全般。雑誌は140誌)といったライバルを一気に抜き去った恰好だが、来年度はさらに会員数300万を超える規模に成長させるのが目標だ。
出版社の間で競争原理の導入も
ドコモショップ店頭での販促を軸に、海外向けの配信や、美容院に置くといった法人向け販売も予定している。現在10%未満にとどまる他社ユーザーも、まだ獲得余地がありそうだ。
今後の課題はどれだけのユーザーを継続、維持できるかという点になる。販売の現場ではスマホとタブレットの同時購入を勧めることも多い。本来は1契約で複数の端末でも使えるのだが、「無料キャンペーンですから」と、スマホとタブレットでdマガジンをそれぞれ契約(合計2契約)させるケースもある(2015年3月に記者が端末を購入した際の実例)。
このように、力技の無料キャンペーンで表面的な会員数を積み上げられるのが携帯会社の強みだが、サービスに満足できなければすぐ解約される可能性もある。継続させるための仕組み作りも重要になってくる。また、現在の月間アクティブユーザー(実際にサービスを利用するユーザー)は2割強。ほかのサービスより高めだが、データ通信量収入を増やすという本来の目的からすれば物足りない水準だ。
もちろん、ドコモもこうした課題は認識している。雑誌の読み込み速度や記事検索の仕組みの改善に加えて、最新号の通知、雑誌のおすすめ機能も強化していく。また、現在はユーザーの課金収入の55%を出版社へ配分し、雑誌あたりのユニークユーザー数(期間内の訪問者数のこと)に応じて毎月配分しているが、雑誌が150誌に達した段階で「読まれない雑誌は新しいものに入れ替えるといった、競争原理を取り入れることも考えている」(那須氏)。
ドコモが満を持して仕掛けた雑誌読み放題。1年足らずで爆発的なヒットとなったが、現在の“絶好調”を続けるためには、出版社サイドの努力も求められそうだ。
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