「岸田首相襲撃事件」1年前の悲劇と何が違ったか エリートSPの適切な動き、見直された警護要則
選挙活動は、政治家が有権者との距離を詰めたがるため、銃火器だけでなく、物の投げつけや体当たりによる危険も払拭できない。野外の場合、今回のように持ち物検査が行われないこともほとんどである。
対策としては、会場には来場者が必ず通過するチェックポイント(検問所)を数カ所設け、そこで警察官が声かけを行うことだ。大きなバッグや重そうな荷物を持っている人には、所持品検査や金属探知機にかけるなどの対応も必要となる。
立地や天候、参加者数によっては計画通りにいかないこともあるかもしれないが、警察官が声をかけることができて、必要があれば所持品のチェックもできる環境を作ることが重要だ。
山上被告もチェックポイントで一度犯行を諦めた
安倍元首相を銃撃した山上徹也被告は、奈良県で犯行に及ぶ前、岡山県で一度、計画を諦めている。この時は、屋内での応援演説だったが、入り口付近で警察官が声かけをしていた。所持品検査まではしていなかったというが、名前を書かされたので、それに警戒したと見られる。警察官の声かけがあるだけで、犯人には心理的な壁ができるため、犯行を食い止めることができるだろう。
5月19日から21日にはG7広島サミットも行われるが、そこでの警護はより慎重に行っていかなくてはならない。ここでもチェックポイントの設置と声かけ、所持品検査や金属探知機、爆発物探知犬などの積極的な導入が必須だ。
それでも今後、一般の人がこのようなテロに巻き込まれてしまったらどうするべきか。岸田首相の一件では、勇気ある一般の方の協力によって救われた面はあるが、安全面からは犯人確保などは警察官に任せ、迅速に現場から退避することが推奨される。もし一般の方の協力を得られたとしても、警察官が迅速に引き継ぎ、2次被害を避けなければならない。
あらゆる「安全」が覆される時代になってきた。どれだけ優秀なSPや警備員がいても、身の安全が保障されることはない。生活者の1人ひとりがテロや危険に対する危機感を持つことが必要なのだ。
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