「台湾パンダ」が安楽死、新たな受け入れ巡る論点 団団の体調不良時には中国の専門家が訪台
団団は10月22日、再び脳のMRI検査を受けた。すると病巣が広がり、病気の進行が速いと判明。脳に悪性腫瘍がある疑いが強まった。台北市立動物園は、脳神経科の専門医師らに相談したりMRI画像を診断してもらったりした。その結果、手術は難しいことから「動物の福祉」を優先して緩和ケアに移ることにした。
長女・円仔の誕生をサポートした専門家が台湾へ
台北市立動物園は、中国のパンダの専門家にも協力を仰いだ。四川省にある中国ジャイアントパンダ保護研究センター(CCRCGP)とオンラインで連絡を取り続け、原因・症状・投薬などについて検討した。それでも団団の体調が安定しないため、同園はCCRCGPに専門家の派遣を要請した。
といっても簡単ではない。中国の習近平国家主席は台湾統一を目指す一方、台湾の蔡英文政権を中国からの独立志向が強いと見なしており、中国と台湾は緊張関係にある。さらにアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が2022年8月に台湾を訪問すると、中国が猛反発するなど波紋が広がった。
そうした中でのパンダの専門家の派遣要請だ。台湾メディアの「台湾国際放送」によると、「中国大陸に対する政策を担う行政院大陸委員会の支援を受けながら、行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)を通じ、個別案件として、中国大陸のパンダの専門家の来台を申請した」。許可は下り、CCRCGPも専門家の派遣に同意した。
CCRCGPの専門家は、同じ年の5月に日本にも来ている。神戸市立王子動物園にいる病気のタンタン(旦旦)に対応した後、8月の帰国直前に東京の上野動物園を訪れた(参照:『「パンダの心臓疾患は珍しい」神戸の旦旦を襲う病』)。
2022年11月1日、CCRCGPの専門家である呉虹林(ウーホンリー)さんと魏明(ウェイミン)さんが台湾の桃園国際空港に到着した。すでに夕方のうえ、桃園市にある空港から台北市立動物園まで車で1時間ほどかかるが、2人は休む間も惜しんで動物園に直行した。
魏明さんは、団団と円円の長女・円仔(ユエンザイ)が2013年7月6日に生まれた時も台湾に来てサポートしている。次女・円宝(ユエンバオ)が2020年6月28日に生まれた時は、コロナ禍のためオンラインでサポートした。
2人は団団を観察して、台北市立動物園のこれまでの対応を高く評価した。団団の情報をCCRCGPの専門家チームとも共有しながら、台北市立動物園の獣医師らと話し合った。
団団の体に大きな負担がかかる検査はできないこともあって、病気の正確な原因はまだ分からなかった。引き続き緩和ケアをしながら、病気の進行に応じて治療計画を調整することになった。
のちに筆者が台北市立動物園を訪れ、当時のことを尋ねたら、「大陸(中国本土)の専門家によると、パンダの脳の病気は珍しいそうです」(広報担当者)とのことだった。
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