「台湾パンダ」が安楽死、新たな受け入れ巡る論点 団団の体調不良時には中国の専門家が訪台

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現在、台北市立動物園には円円、円仔、円宝の3頭がいる。すべて雌だ。団団の死によって、雄のパンダはいなくなった。新たな雄が来るかは「未定です」(台北市立動物園の広報担当者)。

円仔は繁殖を目指して中国へ行く予定はない

円円だけでなく、9歳の円仔も十分繁殖できる年齢になっている。だが、上野動物園からCCRCGPの施設へ2023年2月に旅立ったシャンシャン(香香)のように、繁殖を目指して中国へ行く予定はない。台北市立動物園は「血縁者が多いため」と説明している。

つまり血縁関係が薄くて遺伝子や年齢などの面でふさわしい繁殖相手を探すのが難しいということだが、中国と台湾の微妙な関係も絡むとみられる。そもそも貸与でなく贈与されているので、中国へ行く必要はないとの見方もある。

円仔は台湾で初めて生まれたパンダ。日本でも人気がある。2022年11月24日(筆者撮影)

近年、中国本土以外でパンダが死んだ場合、神戸市立王子動物園やタイのチェンマイ動物園には新たなパンダが来ていないが、オーストリアのシェーンブルン動物園にはパンダが来た。貸与でなく贈与されたケースに限れば、マカオの石排湾郊野公園にパンダが来ている。

石排湾郊野公園には、2009年のマカオの中国返還10周年を記念して、2010年に雄の開開(カイカイ)と雌の心心(シンシン)が到着。心心が2014年6月に病死すると、開開が中国(本土)に戻った。中国側は早速、マカオの中国返還15周年記念として、別のパンダ2頭をマカオに贈ると同年12月に決定。2頭は翌2015年4月に来園した。

台湾のパンダファンと円円・円宝の母子。2022年11月24日(筆者撮影)

筆者は団団の死の5日後、2022年11月24日に台北市立動物園を訪れた。その日と前日に台北市内を歩くと、あちこちで統一地方選の選挙運動が盛んに展開されていた。台湾の人に雄のパンダが来る見通しを尋ねると「(対中融和路線の)国民党が勝てば来るかも」と言う人もいた。

11月26日の投開票の結果、民進党は大敗し、蔡英文総統は民進党の主席(トップ)を辞任した。2024年1月13日には、4年に1度の台湾総統選が予定されている。

パンダはどう関係するのだろう。台湾政治やパンダ外交に詳しい東京女子大学の家永真幸教授に聞いた。

家永教授は「中国との関係だけでなく、経済政策なども総統選の争点になる中で、パンダは小さな意味しか持ちません。しかしパンダは人気があって目立ち、ニュースになります。民進党も国民党も、パンダをないがしろにしているというイメージを有権者に与えるのは避けたい」と指摘。

その上で、「国民党としては、中国との関係をアピールして選挙に勝ちたい。ただ、言い方は悪いですが『パンダごときのために中国に頭を下げている、情けない政党だ』と有権者に思われては逆効果です。さじ加減が難しいですね。

一方、民進党からすれば、新たなパンダが台湾に来たら『中国に媚びなくてもちゃんと付き合えている』というわけで、大きなアピールになります。でも中国政府としては、民進党を利するのは不本意でしょう」とみる。

そして「パンダは政治的な対立構造に巻き込まれやすいのです」と語る。

筆者が見た限り、パンダの飼育現場の人たちは、国・地域間の政治的な関係がどうあれ、互いに協力しながら、飼育や研究に懸命に取り組んでいた。パンダを大切にする気持ちは同じだ。

左の部屋に円仔、右の部屋に円円と円宝が見える(2022年11月24日)。その後、円宝が親離れして、3頭はそれぞれ別の部屋で暮らしている(筆者撮影)
中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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