「子2人とゴミ屋敷に住む」シングルマザーの孤独 ゴミに埋まった勉強机、コバエの飛ぶリビング

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

片付けの最中、二見さんは壁に描かれた子どもたちの落書きを見つめていた。そこには運動会の持ち物が書かれている。算数の勉強をした形跡もあった。

落書き
勉強机のある部屋の壁には、一面に子どもたちの落書きがあった(写真:「イーブイ片付けチャンネル」より)

「どんな気持ちでこの壁に落書きしていたのかなと。住んでいる人の生活が見えてしまうと気持ちが入ってしまいますね。脱衣所も風呂場もゴミだらけなので、きっとわずかな隙間でシャワーを浴びていたんだと思います。あの食卓でご飯を食べている姿や、ゴミの中で宿題をしている姿も浮かびます。それをお子さんたちは普通のことだと思っているかもしれないんです」

この記事の画像を見る(12枚)

片付けによって孤独から抜け出した母親

二見さんは「この仕事が大変だと思ったことがない」という。片付け中の別のスタッフも、「やりがいしかない」と話していた。もちろん、「思ったより大変だった」という理由で辞めていくスタッフもいるというが、現在イーブイで働いている人たちは、好きでこの仕事を続けている。

空っぽの部屋で二見さんが話す。

ゴミ屋敷連載
この連載の一覧はこちら

「皆さんが思っているほど、僕らは大変じゃないんです。だから依頼者さんは『大変な作業をさせている……』なんて思わなくていいですし、『いい人に巡り合えたな』くらいに思ってもらえたらと。

このご家庭と同じように悩まれているシングルマザーの方は多いと思うんですけど、最優先しないといけないのは絶対にお子さんです。『汚いから家を見られたくない』『ある程度片付けてからでないと……』と孤独に抱え込むのではなく、まずは僕らみたいな業者でもいいし、周りに相談してほしいですね」

今回の母親と子どもたちは綺麗になった部屋を引き払い、すでに新居で新生活を始めているという。母親は仕事にさらに邁進するようになったが、もう孤独ではない。「今でもたまに連絡をいただく」と二見さんは嬉しそうに話した。

國友 公司 ルポライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT