東北製造業の大黒柱・いわき、自動車や電子部品、住設機器、製薬など幅広い産業に打撃【地図で見る震災被害】
映画「フラガール」の舞台として知られる福島県いわき市。古くから常磐炭鉱の発展とともに製造業が発展してきたこの都市は、東北地方で工業製品出荷額第1位を誇り、臨海地域には自動車や精錬所、住宅設備や製薬など、多くのメーカーが製造拠点を有する。いわば「東北製造業の大黒柱」とも言うべき都市が、地震、津波、原発の“三重苦”にあえいでいる。
被災直後から設備損傷などによって多くの拠点が操業停止。津波による浸水で復旧のメドが立たない拠点もある。特に薄磯海岸地区や久之浜地区の被害は深刻で、あたり一面は瓦礫の山と化してしまった。また一部の地域は東京電力の福島第1原子力発電所から20~30キロメートルの自主避難地域に含まれていることから、住民は今も不安な日々を送っている。さらに追い打ちをかけているのが、風評被害による物資不足だ。放射能をおそれ、市内に入るのをためらう輸送業者もおり、物資の調達が一部で滞っているようだ。
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今回の震災でいわきに生産拠点を置く各企業も被害を受けた。大きな被害を受けたのはクリナップや第一三共などの沿岸部に拠点を有する企業だ。
クリナップの発表によれば久之浜工場(同市久之浜町)、四倉工場(同四倉町)で津波による浸水被害があった。鹿島工場(同市常磐水野谷町)や湯本工場(同市常磐岩ヶ岡町)など内陸寄りの工場も地震による地面の隆起などにより、一部建屋などが損壊しているという。また、同市周辺にある協力企業からの部品供給の停滞も懸念される。
製薬大手の第一三共の小名浜工場(同泉町下川字大剣)では最主力の高血圧症治療薬オルメテックや高コレステロール血症治療薬メバロチンなどの原薬を製造。現在、製品については2カ月以上の社内在庫があるうえ、医薬品卸企業や医療機関の在庫がほかにあるものの、薬品は被災地では必需品であり、早期の復旧が望まれる。
「フーガ」や「フェアレディZ」などの高級車向けのV6エンジンを手がける日産自動車いわき工場(同泉町下川字大剣)も被災した。いわき工場は横浜工場と並びエンジン製造の中核を担う。現在、日産は4月中旬までに一部操業を開始し、6月にはフル生産が再開できるよう復旧に躍起になっている。