東北製造業の大黒柱・いわき、自動車や電子部品、住設機器、製薬など幅広い産業に打撃【地図で見る震災被害】

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 ただ、心臓部であるエンジン供給が滞る余波は大きい。追浜工場や栃木工場、九州工場など各完成車工場が操業停止を余儀なくされている。いわき工場の年間の生産能力が約56万基。日産の10年度の生産計画が416万台を見込んでいることからいわき工場の影響の大きさが伺える。

また内陸部では車載電装部品やデジタル家電向けの部品メーカーであるアルプス電気が被災。小名浜工場(同小名浜野田字柳町)や平工場(同好間町小谷作字作畑)が震災直後に操業を停止した。現在は操業を再開しているが水道や電力などの復旧も遅れ2週間近くの操業は止まった。同社は宮城県内の4工場も同じく被災。幸い現在は操業を再開しており、サプライ・チェーン(供給体制)へのダメージは最小限にとどめた格好だ。またカーナビメーカー大手、アルパインも震災の影響で操業停止。いわき工場(好間工場団地)の設備が一部損傷したが28日から操業を再開している。

いわき市は都内から200キロメートル圏内であり、常磐自動車道が通っていることから陸路の便がいい。船便では特定重要港湾に指定されている東北一の港である仙台塩釜港からの距離も近い好立地も市の発展に寄与した。

また、各種企業誘致策も充実している。「投資額や従業員数などの条件にもよるが、施設設備に対して最大5億円が補助される」(いわき市役所)。また東京電力福島第一原発からの距離も近いことから電気料金の補助金もある。こうした誘致策が奏効し、安定的な雇用を創出する自動車産業が根づいてきた経緯がある。

福島第一原発の動向はいまだ予断を許さない。もし今後、避難対象の範囲がさらに拡がるようなことになれば、さらに影響が拡大しかねない。
(伊藤 崇浩 =東洋経済オンライン)
写真は日産いわき工場 同社ホームページより

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