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イトマン事件捜査のシナリオ描いたバンカーの死 破天荒なサラリーマン・國重惇史氏を悼む

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  • 柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表
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事件後もしばらく、國重氏は他行の不良債権の資料などを持ち込んで取材を促してきたが、間もなく私が海外に転勤となり疎遠となった。楽天時代に事務所を訪ねて以降、音信はなかった。

その後もサラリーマン離れした人生を歩んだ模様は、児玉博氏の著書『堕ちたバンカー』(小学館)や、不倫相手だったという女性が國重氏の代筆として投稿するSNS・フェイスブックへの投稿に詳しく書かれている。

告発しなければ損失は1兆円にも

住友銀行はイトマン関連の不良債権を単独で処理した。本来なら倒産させて処理すべきところを、他行の貸し付け分も含めて丸抱えに近い形で面倒を見た。金融不安を防ぐためとの弁明だったが、自行のトップが絡む不祥事案件の尻拭いに預金者の金をあてたとのそしりは免れないだろう。

イトマンの不良債権問題の処理をめぐる一連の行動について、國重氏は生前「あれをしていなければ、銀行本体も闇の勢力に食い込まれ、3000億円の損失が1兆円になっていた」と話していた。

確かに当時の國重氏の奮闘ぶりに私は、所属する組織、銀行、日本の金融を守るという使命感や気概を感じた。一方で、自社のトップに告発状を送りつつ、その秘書と懇ろとなる、闇の勢力と対決し資本の力でねじ伏せる、といったサラリーマンの枠を超えた大胆さやリスクの取り方にはサイコパス的な気質を感じたものだった。

國重氏がいなければイトマン事件は、そして住友銀行はどのようになっていたか。まさしく唯一無二の個性だっただけに、訃報に接してそんな問いが頭を巡った。

事件から30年以上がたち、國重氏だけでなく多くの関係者が鬼籍に入った。改めてお悔み申し上げる。

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