京都新聞HD「違法報酬19億円」問題の隠れた焦点 大株主に利益供与、問われる「報道機関」のあり方

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京都新聞の紙面
第三者委員会の調査結果を1面で報じた京都新聞=2022年4月22日朝刊(筆者撮影)
関西の名門地方紙・京都新聞が、大株主・白石家への利益供与問題で大揺れに揺れている。違法に支払われたとされる資金は、過去34年間で総額19億円に上る。報酬の返還を求めた訴訟が始まったほか、京都新聞社記者による刑事告発も行われた。
ただ、これらを“内紛”として捉えていると、問題の本質を見誤るかもしれない。報道は誰のためにあるのか、メディアは何のために存在するのか、といった根本的な問いかけが「京都新聞問題」には潜んでいるからだ。

日本には、地方紙を中心にオーナー家が大きな力を持つ新聞社が少なくない。その1つが、創刊140年あまりの歴史を持つ京都新聞だ。源流は明治12年(1879年)創刊の「京都商事迅報」。大政奉還の12年後には早くも初号が世に出ていたことになる。

京都新聞は2014年、地方紙として最初に持株会社方式を取り入れ、京都新聞ホールディングス(HD)を発足。新聞を発行する京都新聞社は、子会社としてHDの下にぶら下がる形となった。

発覚のきっかけは2019年に始まった経営資源の見直し

HDや京都新聞社の関係者によると、特定株主への利益供与を禁じた会社法120条違反の資金流出問題が発覚したきっかけは、2019年にHDで始まった経営資源の見直しだった。

「Yahoo!ニュースやSNSに押され、新聞事業はどこもジリ貧。厳しい経営を立て直し、明確な将来ビジョンを探るため、グループ全体の経営見直しが始まった。ところが、グループ内の資金フローなどを確認していくうちに、巨額の資金が社外に流出していることが判明。子会社の京都新聞社が執拗にHDに働きかけた結果、第三者委員会をつくって解明に乗り出すことになった」(京都新聞関係者)

流出先は、京都新聞で絶大な力を持っていた白石浩子氏(81)。資産管理会社の持ち分なども含め、白石氏は実質約30%を握る大株主で、HD設立前に会長、相談役を歴任。HD設立後も相談役を務めてきた。

ところが、今年4月に第三者委員会が公表した調査結果によると、白石氏に対しては、会社法120条に違反する形で、HD側から高額の報酬を提供されていたことが判明した。総額は34年間で約16億4000万円。このほか、白石氏の私邸管理費名目で少なくとも2億5000万円を支払っていた。

白石氏はこの間、一度も出社せず、役務の提供もなかったことなどから、「経営に口出ししない代わりの報酬」だったとされている。

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